銀行に就職・転職する際に有利な資格は?【難関資格でも顔パスにはなりません】

  • 2020年9月15日
  • 2023年10月17日
  • Banker
銀行への就職に興味があるひと『銀行っていうと資格試験とか大変そうだな。入社したあと、いったいどんな資格を取得しなければならないんだろう?入社前に先んじて取っておいた方がいい資格はあるのかな?転職経験者や現役銀行員に聞いてみたいです。』

 

銀行員にとって避けては通れない数々の資格、重要度に応じて現役銀行員が解説します。

 

この記事の内容

 

・入社、転職時に有利な資格
・入社後に取得を推奨される資格
・入社後に取得必須とされる資格

 

僕は、現役の銀行員です。
新卒でも転職でも、採用時に有利な資格、あるとベターな資格、むしろ必須な資格。
資格によって濃淡が分かれます。
ただ、厳しいことを言うようですが、どんな資格でも、残念ながら銀行入社の顔パス的なものはありません
それだけは肝に銘じておいてください。

 

実際のところ、どんな資格がどのような位置づけなのか。
現職の立場、また銀行に転職した経験を元にお話しします。

 

参考までに僕のスペックをある程度開示しておくので、各資格の難易度の参考にしてみてください。

・大学は旧帝大以上
・商学部卒
・一浪
・大学時代は勉学そっちのけで、なんとかギリギリ卒業
・生粋の日本人で英語は元来へっぽこ

 

 

入社、新卒時に有利な資格


いずれも超絶難易度の高い超難関試験です。
覚えておいておいて頂きたいのは、これらの資格を取得しても残念ながら銀行への就職は保証されないということ。
最低限のコミュニケーションスキルは銀行において必須と考えてください。

 

 弁護士

 

言わずもがな国家試験の最高峰。
2020年現在では、法科大学院を卒業しないとなれません。
昔は資格試験一発ラッキーも極まれにありましたが、今は時間とお金が必要です。

 

弁護士資格を目指すひとが銀行員への就職を志すことはほぼないと思います。
でも、銀行でも法律の専門家のニーズは結構あります。
外部弁護士に意見を求めるとコストがかかってしまうので、社内弁護士に意見を求めたいという場面は結構多いのが実態です。
下手な弁護士事務所に入社するよりもよっぽど賢い選択のような気もします。

 

資格取得難易度は文句なしの★★★★★です。
学部卒して法科大学院に入学し、最短でも取得にかかる時間は最低でも5年程度と見た方がよいと思います。
新卒であれば芽がありますが、働きながらの取得は現実的に不可能だと思います。

 

 税理士、会計士

 

こちらも最高峰の資格試験の一つです。
税理士は5科目の合格が必要になりますが、1科目合格するのも骨が折れます(僕は簿記と財務諸表を受けたことがありますが、結局受かっていません)。
会計士は2次試験を通過すればよいものの、最難関資格の一つです。

 

税理士は、銀行では相続などのコンサルティング業務や主計・財務・会計セクションで重宝されます。
会計士は、主に監査・会計セクションで重宝されます。
弁護士と同様に、外部に委託したり意見を求めるとコストがかかるため、社内にこういった資格ホルダーがいるとありがたい存在と受け止められると思います。
税理士法人や監査法人は激務で知られ、銀行のほうがワークライフバランスに優れているのではないでしょうか。

 

資格取得難易度は弁護士には劣るものの★★★★★です。
税理士の場合は1科目ずつ受けていけば数年で取得できる可能性はありますが、1科目合格ですら働きながらはハードルが高く、1科目1年くらいの勉強時間は必要と思った方がよいです。
会計士の場合は税理士のような積み上げができず、白黒はっきりした試験になります。
大学生でまとまった勉強時間が確保できても2年程度の時間は必要になるので、働きながらの合格はほぼ不可能だと思います。

 

 TOEFL高得点

 

英語に関する資格だとTOEICが有名ですが、スピーキング・ライティング・リスニング・リーディング、すべてを兼ね備え、大学講義レベルでも実践力を評価できる資格がTOEFLです。

 

TOEICと異なり、専門的かつ長文のリスニング・スピーキングが必要になります。
海外MBAの挑戦チケット的な位置づけもあり、本当に話せる英語試験として重要度は高いです。

 

グローバル化が進む昨今では、英語力があるのは確実にメリットです。
今は中国のほうが、とか、ITで翻訳可能だし、とか、いろいろ言われますが、外国人と共通言語で話ができるというのは、やはり現代においてとても大きな長所です。
運用セクション等では外国の現地とテレカンで会議することも多く、英語で意思疎通ができることが最低限のスキルとなりつつあります。

 

資格難易度は、得点次第ですが、仮に90/120点目指すとしたら難易度は★★★★☆くらいかと思います。
既に英語の下地がある人ならまだしも、最低でも1年くらいの学習が必要なレベルだと感じます。

 

 CFA

 

CFAは、米国証券アナリスト(Charterd Financial Analyst)という国際的な投資プロフェッショナル資格です。
試験は全て英語で、ライバルは全世界です。
1次~3次試験まであり、基本的に年1回の試験実施なので時間がかかります。
しかも、金額も結構莫大にかかります(為替にもよりますが、最短でも数十万円は最低かかります)。

 

昔は日本で開催されていなかったのですが、今は東京で受けることが可能です。
日本の証券アナリストの知識に加え、それらをすべて英語で解釈・表現できるスキルが求められます。
保持していると名刺に肩書を載せることができ、信用度は増すでしょう。
運用セクションでも持っていると一目置かれますし、外資系金融機関にもチャレンジ切符になると思います。

 

資格難易度は、★★★★☆です。
3次試験になると英語でのライティングが必要になるので、レベルが跳ね上がります。
働きながらでも取得は可能な範囲だとは思いますが、数年必要になるので、取得を目指すならばそれなりの犠牲を覚悟しましょう。

 

 不動産鑑定士、アクチュアリー

 

この二つに関しては、僕も詳しくはありません。

 

不動産鑑定士は、その名の通り不動産に関連する部署では重宝されます。
銀行員というよりも、信託銀行で必要になる資格です。
信託銀行に新卒入社してから、この資格を取得する選抜組がセッティングされ、業務はそこそこに資格試験合格を目指すカリキュラムが組まれるほどの試験です。

 

アクチュアリーは、年金運用や年金制度設計等に関連する部署で重宝されます。
こちらも、銀行員というよりも信託銀行で必要になる資格です。
不動産鑑定士と同様に、信託銀行に新卒入社してから、この資格を取得する選抜組がセッティングされ、業務はそこそこに資格試験合格を目指すカリキュラムが組まれるほどの試験です。
文系よりも理系のほうが取り組みやすい、数学や統計に近い試験となります。

 

資格難易度は、★★★★☆です。
僕も目指したことがないので正直なところ肌感覚はありません
働きながらでも1年~2年で取得できるひともいるので、最難関ではないものの、やはりハードルは高く、その対価として資格ホルダーは重宝されるでしょう。

 

 

入社後に取得を推奨される資格

 

入社すると取得するようにと推奨され、昇格の要件になりうる資格です。
採用面接時に取得欄に記載できると、『これもう取ってるんだ、頑張ってるね』等の会話を引き出すプラス材料にはなると思います。
ただ、残念ながら採用の決め手にはなりません。
あくまでもコミュニケーションスキルや人柄が大切です。

 

 TOEIC

 

言わずと知れた英語資格のカリスマ的存在です。
入社した後も、TOEIC760点くらいは取得できるように促されます。
海外異動や留学、海外現地とやり取りのある部署への異動には、条件となることもあるでしょう。

 

TOEICは、純粋な英語力の側面よりも、高得点を取るためのテクニックが活きる試験でもあります。
一朝一夕ではうまくいきませんが、オススメとなる参考書を繰り返すことで、努力は必ず報われる試験ともいえます。
このあたりはこちらの記事で解説します。

銀行員パパブログ

  がんばってTOEIC勉強中のひと『銀行への就職とか、将来的な海外転勤に備えて、TOEICの点数をあげたい!でも世の中…

 

資格難易度は、800点で★★★☆☆といったところでしょうか。
TOEICで高得点が取れるからといって英語がバリバリしゃべれるわけではないのですが、皆が受けている物差しになるので、ある程度の点をとっておくと採用面接時にも『英語しゃべれるの?』といった会話に繋がりやすいと思います。
しゃべれないなら『TOEICは頑張ったんですけど、スピーキングはまだだまで、、、これから頑張ります』くらいに言っておくとよいと思いますよ。

 

 証券アナリスト

 

日本版の証券アナリスト、略してCPAです。

 

CFAに比べると、知識量はそこまで大きく変わらないものの、日本語オンリーであるだけでかなり難易度が下がります。
しかし1次試験が3科目あり、2次試験は年1回の開催となるため、最低でも2年はかかると思ってください。
また、出題範囲が膨大で、頭に知識を入れ込む時間と、それに基づいて解を出す訓練が必要となり、勉強時間は相当かかります。

 

働きながら取得するひとが大半だと思うので、最難関資格ではありません。
難易度は★★★☆☆です。
しかし、1次試験・2次試験、それぞれ一発合格を目指すなら、最低でも3か月以上は勉強する必要があると思います。
資格取得の詳細は別の記事で解説したいと思います。

 

これを取得していると、運用セクションでは多少効果があります
名刺に肩書を名乗ることができます。
ただ、金融界隈では結構みんな持ってるのであまり差別化もできず、僕なんかは肩書を名乗る年会費がもったいないから名乗っていません。

 

 宅建

 

不動産を扱い部署では必須です。
特に信託銀行では取得が必須となるところも多いと思います。
銀行でなくても不動産業界でも重宝されるため、他の資格と違って潰しがきく資格です。

 

合格率が結構低く、働きながら取得するのは骨が折れる資格です。
知識の詰め込みも必要なのですが、過去問や練習問題の積み重ねで出題パターンに慣れることが大切。
最低合格ラインがそこそこ高く、しかもどんなに勉強してもわからない突飛な問題が数問出題されるので、取捨選択も求められます。

 

資格難易度は★★★☆☆です。
僕の場合は大学時代の時間があるうちに取得しましたが、それでも2か月ほどかかりました。
不動産に特化しているのですが、民法などの法的論点も出題されるため、苦手意識のあるひとにはなかなかハードルが高いかもしれません。

 

入社後に取得必須とされる資格

 

入社した後、必ず取りなさいと言われる資格です。
採用面接時には、プラスになることはないと思います。
なぜならどうせ入社したら取るのが当たり前になるから。
ひょっとすると『こんなマイナーな資格とってるってことは、銀行のことを勉強してるのかな』くらいには思われるかもしれません。

 

 銀行業務検定

 

銀行員になると、要取得資格にとにかく登場します。
税務、法務、財務、証券、外為、金融コンプラ、など多種多様な科目があり、しかも3級や2級、ものによっては1級もあるので始末が悪いです(なんで科目全部で号級を揃えないんでしょうか、、、)。

 

一般的には、税務、法務、財務あたりの3級と2級くらいまでの取得を求められます
選択式なので運も左右するものの、記述式や計算も出てくるのでそれなりの理解力が必要です。
取得しても銀行以外では(多分まったくといっていいほど)潰しがきかない試験です。

 

資格難易度は★★☆☆☆です。
それぞれ必要となる勉強時間は働きながら1か月~2か月くらいでしょうか。
合格率は意外と低いのですが、銀行員で仕方なく受けている人もカウントされているので、あまり参考にしなくても良いでしょう。
>>銀行業務検定試験都道府県別合格率ランキングのご紹介

 

 証券外務員

 

こちらは本当に取得必須の試験です。
取得しないとできる業務に制限が出てしまうためです。
入社したらまず受けることになると思ってください。
会社員としての登録になるので、入社前に取得する必要性はほぼありません。

 

銀行業務検定と似ていますが、外務員一種、二種、内部管理責任者など、いくつか種類があります。
管理職など昇格してくると必要になる科目もあります。
一度合格したら、数年に一度研修を受けないといけない珍しい資格でもあります。

 

資格難易度は★☆☆☆☆です。
働きながら2週間程度、過去問を解いていれば(覚えれば)受かります
業務上必須なので、参考書などは会社から支給されます。
最初は『全然わからん、、、』となるかもしれませんが、出題パターンは少ないので、とにかく過去問を覚えましょう。

 

 生命保険一般、損害保険一般、生命保険変額

 

銀行が保険販売の一般解禁を受けてから取得必須となった試験です。
ただ、過去問を2周くらいすれば受かる、超絶簡単な試験です。
この記事に記載した試験の中で、圧倒的に一番簡単です。
証券外務員と同じで、最初は『全然わからん、、、』となるかもしれませんが、出題パターンは少ないので、とにかく過去問を覚えましょう。

 

資格難易度は★☆☆☆☆です。
参考書なども会社から支給されます。

 

 

その他の資格

この記事に書いていない、例えばFPや簿記といった、いかにも金融に関係ありそうな資格は、結構中途半端でインパクトに欠けます。
あるに越したことはないけど、必須でもなければ推奨でもなかったり。
行政書士や司法書士、中小企業診断士なども資格難易度はそれなりにあるものの、銀行業務との結びつきが弱かったりします。

 

大事なことは、どんな優れた資格を持っているか、ではなくて、それを使ってどんなことができるか+それをアピールできるか、です。
資格欄に『弁護士』と書いておけば自動的に採用される、というわけではありません。
銀行に入社するにあたり、相手の質問や投げかけに(適度な)愛想を持って受け答えできる素質のほうが重要だと僕は思います。

 

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