麺や紀茂登とは?
麺や紀茂登とは、2023年8月に茅場町にオープンしたラーメン屋です。
本家の紀茂登は神楽坂にある超高級料亭で、そこで夜飲み食いすると一人70,000円くらいかかります(僕は行ったことありません)。
食べログでも4.47点という異次元の高評価を誇ります(2023年8月現在)。
そんな神楽坂の紀茂登を手掛ける木本氏が茅場町にラーメン店を出しました。
その名も『麺や紀茂登』。
完全予約制でOMAKASEというサイトから予約することができますが、オープン早々すでに満席気味でなかなか席を確保することはできません。
1杯3,000円という強気の価格設定にもかかわらず、食べてみたいという方は多いのでしょうね。
僕もひそかに席を狙っていたのですが、とある在宅ワークの時にふとOMAKASEを覗いてみると、なんと当日に1席空きがあるではありませんか!
家はお店から近いところにあるということで、これは天の思し召しだと勝手に解釈し、1杯3,000円という未知の世界を開きに往訪することにしました。
味は文句なしですし、1杯3,000円に違わぬ仕事ぶり。
僕は食レポとか全く自信ありませんので、ここではどれだけ美味しかったのかは割愛させていただきます。
食べログで(このお店に限らず)感想を書いてますので、よかったらご参考ください。
さて、食べている最中に木本氏が常連さんと思しき方々と談笑されていまして、気になることを仰っていました。
若干話に着色や解釈のズレなどがあるかもしれませんが、概ねこのようなお話でした。
当たり前ですが、茅場町近辺にもラーメン屋はたくさんありますし、どのお店もせいぜい1杯1,500円くらいです(それでもひと昔前に比べると随分高くなりました)。
一駅隣の八丁堀駅前にある日高屋で醤油ラーメンを食べれば1杯390円です。
さすがに1杯3,000円で『儲けが少ない』ってことはないでしょ~~
ってことで、検証してみました。
1杯3,000円は高い?安い?検証してみた
簡易的に計算してみました。
✔ 収入
まず席数ですが、カウンターが10席と、奥に4人がけテーブルが1つありました。
したがって、満席の場合は1巡で14人座れることになります。
店の予約は12時から30分ごとに1回転で、14時までの4回転制と思われます。
なので、楽観的に全部の回がキャンセルなく埋まったと仮定して、4回転×14名=56名/1日となります。
休みは不定休なのでなんとも言えませんが、まぁせいぜい週2日くらいは休みでしょう。
月あたり20営業日となるので、1か月の総来店者数は、56名×20営業日=1,120名となります。
ラーメン1杯3,000円ですが、ビールなども注文することができるのと、1日数杯限定で1杯3,500円の塩ラーメンも販売しているので、1人あたりの単価は3,500円とします。
つまり、1か月あたりの収入は、1,120名×3,500円=3,920,000円となります。
✔ 支出(うち原材料費)
難しいのが支出なのですが、原材料費・人件費・土地代(水道光熱費、ファシリティコスト含む)あたりが三大要素になるかと思います。
銀行員やってましたが、飲食については全く触れてこなかったので、全然的外れだったらすみません…
最も難しいのが原材料費でして、どのくらいの価格なのか想定が困難です。
とりあえず、店舗説明が以下の通り記載されていますので、このあたりがコストの大部分を占めると考え、ざっくり試算することにいたしましょう。
「麺や 紀茂登」は、ミシュラン二つ星「紀茂登」の和食DNAを受け継ぎ、新しい価値観の麺とスープの世界に挑戦します。
■出汁
水は「エビアン」を使用。こだわった水が豊かな味わいを与えます。
わずかなえぐ味も出ないように、アクが出ないよう98°Cで管理し、煮立たせずに出汁を取っています。
ガラは使用せず、丸鶏は肉の部分まで、全てを出汁だけのために使用しています。
■スープ
スープは、厳選された三種のブランド地鶏の出汁を融合させています。
熊野地鶏から引き出される深い旨味、天草大王の風味豊かな香り、岡崎おうはんの独特な切れ味を一度にお楽しみいただけます。
紀茂登本店で使用される極上の食材(白甘鯛、アワビ、鱧など)を季節に合わせて選び抜き出汁を取って、鶏出汁ベースのスープをさらに昇華させています。
日本料理の美しさにこだわった優しいスープは、塩味を絶妙に調整し、飲み切ることができるスープに仕上げています。
■チャーシュー
チャーシューは、東京Xなどのブランド豚を紀茂登独自の手間を惜しまない調理法で、肉の旨味を凝縮して詰め込んでいます。
■卵
卵は「夢王」を使用。塩水だけで仕上げ、素材の味を生かしています。
■調味料
勿論、化学調味料は使用していません。
「龍野ブランド」の醤油、中国最高級の「宮廷塩」、クリスマス島の塩、こだわり抜いた醤油と塩で調味しています。
素材のポテンシャルを最大限に引き出した大胆で繊細な味をぜひお楽しみください。
水はエビアンを使っているとのこと。
麺を茹でる分にも使っているかはわかりませんが、少なくともスープにする分には使うと思うので、ざっくり1杯作るのにエビアン500mlを1本と仮定します。
エビアン500mlは1本170円ですので、170円×1本=170円/1杯となります。
丸鶏は何のブランドを使っているかわからないので、一般的に有名な比内地鶏と仮定します。
ネットで検索すると、業務用の一流料理店に卸す比内地鶏が1匹6,480円となっていました。
1日に10羽使うとのことだったので、1日(56食分)あたり6,480円×10羽=64,800円となります。
1杯あたりに直すと、64,800円÷56食=1,160円/1杯となります。
日本三大地鶏の1つと称される比内地鶏を、秋田県でも本場中の本場、大館市から鮮度抜群の中抜き状態でお送りいたします。…
スープに使っている白甘鯛や鮑は、本家の紀茂登と両用しているかもしれないのと、どのくらい使っているのかが全く不明なので、いったん0円とします。
続いてチャーシューですが、東京Xを使っているようで、実際にはかなり薄切りになっていました。
1杯あたり10gもないのではないかと思いますので、1日56食作るのに560gほどあれば足ります。
以下のサイトで東京Xのチャーシューが230gあたり5,000円で販売されていますから、醤油などの調味料の含めて同水準のコストがかかると想定し、1日あたり230g×2.5つ=5,000円×2.5=12,500円となります。
1杯あたりに換算すると、12,500円÷56=223円となります。
続いて卵ですが、夢王を使っているとのことで調べてみると1つあたり108円だそうです。
1杯に卵1つでしたので、1杯あたり108円となります。
最後に調味料ですが、こればかりはわかりません。
先ほどの白甘鯛や鮑などと一緒で、がっちゃんこされているのだと思いますが、エイヤで1杯あたり100円かかっていると仮定しましょう。
これらを全部合算すると、1杯あたりの原材料費は以下の通りとなります。
水:170円
鶏:1,160円
チャーシュー:223円
卵:108円
調味料等:100円
合計:1,761円
✔ 支出(うち、人件費と土地代)
人件費ですが、店内にはスタッフの方が4名おられたと記憶しています。
仕込みや調理を行う正社員が2名、アルバイトが2名と仮定し、均すと一人あたり30万円/月くらいではないかと推測します。
正社員が月40万円(年収500万円)、アルバイトが月20万円(年収250万円)くらいだと、飲食店業界としてはこのくらいで当たらずとも遠からずではないでしょうか。
上記と仮定した場合、1か月あたりの人件費は30万円×4人=120万円/月、となります。
土地代ですが、茅場町駅周辺の店舗賃料の相場は平均25,420円/坪だそうです。
最高坪単価は55,000円だそうですが、麺や紀茂登は駅近で最新のビルだったので、おそらく高い方に近い価格帯だと思われます。
また、ラーメン店自体の坪数は、せいぜい15坪くらいかなという印象でした。
したがってテナント代は55,000円×15坪=825,000円となります。
そのほかに機材のメンテナンス費や水道光熱費などがかかると思いますが、これだけ高コストだと固定費はたかが知れてますし、ざっくり月10万円と仮定します。
茅場町駅周辺の店舗物件賃料相場を見る|詳細| 飲食店ドットコム (inshokuten.com)
以上ですべての費用を合算すると、以下のようになります。
原材料費:1,761円×1,120杯=1,972,320円/月
人件費:1,200,000円/月
土地代等:825,000円+100,000円=925,000円/月
合計:4,097,320円/月
✔ 1杯3,000円でも拘りすぎてて儲からない!
ということで、1か月あたりの収支は以下のようになりました。
収入;3,920,000円/月
支出:4,097,320円/月
赤字です、どうもありがとうございました。
まぁ、支出はかなり保守的に算出している面はあります。
エビアンとか、希望小売価格で調達しているわけはないし、鶏もまとめ買いとか定期購入でかなり安く調達可能だと思います。
土地代も結構保守的な計算をしているので、実際にはもっと安く済んでいる可能性は高いと思います。
とはいえ、それでも結構厳しい経営になっているんだなという印象です。
特に、木本氏の仰る通り、鶏が高い…
ここまで拘って作った1杯にどこまで価値を見出すかは人それぞれだと思います。
それでも来てくれるお客さんがいるからこの価格で提供できるのでしょうし、お店が存続できるのだろうと思います。
実際のところどのくらい儲けが出るのかはわかりませんが、少なくとも暴利を貪っているというわけではないと考えますので、これから食べに行かれる方はどうぞご安心ください笑
それにしても、日高屋とか幸楽苑とか、1杯300円~400円でラーメンを出すってのは、本当に企業努力の結晶ですな。