この記事の内容
・それでも僕が銀行員を続ける理由
僕は、現役の銀行員です。
ふたつのメガバンクを経験しており、妻も現役の銀行員をしています。
そのため、一般的な銀行員と比べて、より標準的な銀行員がどんなものであるかをご説明できると思います。
銀行員というと、給料が高いけど仕事が大変そう、といった感じでしょうか。
半沢直樹のドラマのイメージもあり、最低最悪な上司や役員に振り回されてばかり、という悪い印象をお持ちの方もいるかもしれません。
ドラマと現実は当然ながら違うわけでして、リアルな銀行員はどのような理不尽な仕事をしているのか、具体例を紹介したいと思います。
『このくらいなら耐えられるよ』『そんな大変なら僕には厳しいな』といった皆さんそれぞれの感覚と照らし合わせて読んで頂ければ幸いです。
銀行員の仕事が理不尽だなと感じる瞬間
辞めたいなと思うような銀行員あるある、リアル版です。
✔ 目標値が高すぎる
まず、与えられる目標値が高すぎると感じることがしばしばあります。
例えば、前期の実績が100だったとしたら、今期の目標は100を下回ることはまずありません。
負担が軽くても120、重いと150くらいの目標が課せられる印象です。
銀行も(多くは)株式会社なので、株主に投資してもらわなければなりません。
投資してもらうためには成長戦略を描き、それを実現しなければなりません。
会社が成長する=収益が前年対比UPする、これを世間的にコミットしないといけないわけです。
その結果、部門や部署、チームや個人の目標値にブレイクダウンされていき、前年対比で大幅に高い目標値が課せられるわけです。
『前期あれだけ頑張って100なのに、今期150なんて無理に決まってんじゃん…』と毎年4月に思うわけですが、実は目標値は収益だけではありません。
例えば取扱残高や訪問・提案件数、事務ミスの数、後輩への勉強会開催回数、退社時刻の短縮=仕事の効率化、など様々な目標が課されます。
逆にいうと、全部の目標は達成できなくても、一部の項目は達成できたりもするわけで、業績評価の時にはそういった多面的なアピールと評価がなされます。
✔ 目標値を決めるための鍔迫り合い
当然、目標値は低い方が銀行員にとってはハッピーです。
一方で、会社全体の目標値は先ほど述べた通り、株主にコミットする形で経営企画部や役員、社長が決定してしまいます。
会社全体の目標値はありきで、これをどうブレイクダウンしていくか、という作業工程があるのですが、ここに費やす時間と体力が結構無駄だなと感じることが多々あります。
例えば、会社全体の目標が100だとします。
A部門とB部門とC部門にこれを振り分けるとき、各部門の役員間での鍔迫り合いがあります。
いや、どういった割合にするかの素案は経営企画部や財務部がつくり、それを各役員に諮ることになるので、この場面ではそれらの部署の担当が頭を悩ませることになります。
次に、A部門の中のa部とb部とc部にどう割り当てるかの議論がなされます。
この素案作成は、各部門の企画部署が担います。
各部の部長は、当然ながら自分の部署の目標値を低くしたいので、企画部署の素案から一段の引き下げを要請します。
企画部署は、各部の部長に納得してもらえるようなロジックを作らないといけないわけです。
一方、各部署のチームや個人は、現場として実態どれほどの数字を積み上げられるのが現実的かという感覚がありますから、『このくらいが出来て目一杯だよ』と部長に対して説明するわけです。
このように、各部署の目標や個人の目標値ができるまでの道のりがそもそも長く険しいものであり、ここに時間と体力を費やすのが顧客本意なのだろうかとしばしば思います。
一方で、ここで個人や部としても戦わないと、ボーナスが減ったり昇格できなくなったりするので、頑張らざるをえないわけです(何とか目標値を低くするようにする)。
ジレンマではありますが、部署間でのせめぎ合いが多く、理不尽だなと思う瞬間でもあります。
✔ 結論ありきの理由作り
銀行の仕事は、トップダウンのものとボトムアップのものに大別されます。
どちらの方が多いかと問われると、部署によるかなと思います。
ボトムアップというのは、まさに現場で案件となる話の芽が出てきて、それが実を結ぶケースを指します。
一方、トップダウンというのは、役員や部長から指示によって案件を進めるケースです。
トップダウンが悪いわけではありません。
むしろ収益に繋がる案件を作ってくれたのだから、銀行員としては感謝すべきところでもあります。
それが自分の実績にも繋がるわけですからね。
ただ、本音と建前の使い分けをしなければならない場面がたまにあります。
例えば、顧客先の社長と銀行の役員が大学の同期だと分かったとします。
上司(銀行の役員)からは、『あいつは大学の同期だ、アポ入れろ』と言います。
案件も、その可能性も特にない顧客だけど、役員に言われたので渋々無理矢理アポを入れます。
役員が面談を終えると『融資する話をつけてきた、すぐに社内手続きをするように』と言われます。
しかしその顧客は融資残高が限界まで貸し出ししている先で、社内規定でこれ以上の融資は無理です。
稟議に『役員が勝手に話をつけちゃったから追加融資OK出してください』とは書けません。
決裁部署に根回しをしつつ、『この顧客とは将来的な取引拡大が見込めるため』などと建前のロジックを書いて稟議を上げ、ようやく決裁に至るわけです。
この『この顧客とは将来的な取引拡大が見込める』が現場としての本音なら特に問題はありません。
ただ、必ずしもそうとは限らないのが銀行の現場です。
こうした案件を進めていると、銀行員は理不尽だなと感じます。
それでも僕が銀行員を続ける理由
理不尽でも、辞めるほどではないかなと思います。
✔ 目標なんて達成しなくても死なない
当然、目標は大事です。
ボーナスや昇格の評定に響きます。
目標にいかなければ上司に叱責されることもあるでしょう。
ただ、頑張っても達成できない目標も世の中にはあります。
前述した通り、目標は収益だけではありません。
収益はいかなかったけど、仕事の効率化を進めました、でも良いのです。
収益がいかなくても、ボーナスが多少減って、昇格が少し遅れるだけです。
クビになるわけでもなければ、死ぬわけでもありません。
多少給料が減ったり、昇格が遅れても、それでも銀行員の給与水準は世間一般から比べれば圧倒的に高いと言えます。
✔ どこの業界も似たり寄ったりでは?
銀行の仕事が理不尽だなと思う具体例を3つ上げましたが、実は銀行に限らず、どの業界やどの会社でも似たようなものではないかなと思ったりしています。
もちろん、銀行は学歴の高い人の集まりであるため、地頭の良い人がロジックをこねくり回す世界だからという観点での大変さはあると思います。
ただ、目標値の押し付け合いや役員の鶴の一声的なことは、多くの企業にあるものだと思います。
銀行に就職することを目指しているひと『銀行員は平均年収が高いし、何だかんだでつぶれなさそうで安定してる。自分も就職し…
むしろ、銀行員みんなが地頭が良いので、不可能なことやどうしようもないことは理解をしてくれます。
でも仕方ないからここで折り合いをつけよう、と着地点を見出そうとします。
頭の悪い集団だと、うまい落とし所を見つけられず、むしろより大変な場面に遭遇するかもしれません。
✔ 何と言っても給料が高い
どうせどんな業界、どんな会社に行っても同じような理不尽さを味わうなら、給料が高い方が良いに決まっています。
『給料が低い方が良いです』という奇特な方は、ボランティア活動にいそしんでください。
忙しく働いているサラリーマン『こんなに働いてるのに年収は低いしボーナスもあまり出ない。コロナで仕事も減ってるし・・・…
給料が高ければ趣味に費やすお金が多くなります。
食べたいものも特に我慢なく食べることができます。
結婚や子供を持つことも、経済的な制約から開放されます。
忙しさや大変さ、理不尽な印象を持つ方も多いと思いますが、就職・転職の際には一度考えてみてはいかがでしょうか。
国税局からの発表『民間給与実態統計調査は、統計法に基づく基幹統計であり、昭和 24 年分から始まり、今回が第 71 …