【ここが変だよ銀行員】世間のイメージは概ね正しいと思います

  • 2020年9月29日
  • 2023年10月18日
  • Banker
 
銀行に就職を考えているひと『銀行員ってすごく細かくて優秀なイメージがあるけど、実際にどんなふうに仕事を進めてるんだろう。ハンコとか書類とかお札に囲まれているのかな?他の企業と違った文化とか風習があれば教えてほしいです。』

 

こういった疑問に答えます。

 

この記事の内容

 

 

・紙文化
・印鑑文化
・再鑑文化

 

 

僕は現役の銀行員です。
某メガバンクに勤めています。

 

インターネットで『銀行員 イメージ』と調べると、こんな世間の声が聞こえます。

 

 

・頭が堅い。けち。細かい。とあまりいい印象はない。
・周りでも銀行員と合コンしたら1円単位まで割り勘だったと割と聞く話です。
・1円でも合わないと帰れない大変そう。
・押しが強い。真面目。堅物。神経質。

 

 

割り勘が1円単位というのはさておき(笑)、細かい・堅いというイメージが強いようです。
真面目で神経質というのも、世間から見た一般的な印象なのかもしれません。
普段、銀行の窓口で受け付けしている行員も、笑顔こそあれ、説明すべきことは必ず説明するし、お金の振込などでは何回も・複数の目でチェックしている姿を目にすることが多いことから、そのようなイメージを持つのでしょう。

 

実際に行員一人一人が『真面目か』と問われると、そうでもありません。
他企業の社員と比べて、となると比較のしようもありません。
必要事項の説明やお金の確認は、業務上必要だからみんな必ずしているに過ぎません。
でも、少なくともそういったことが『死ぬほど苦ではない』ひとが銀行員をやっているとはいえると思います。

 

銀行は歴史も古いし、規制や当局の視線もあって、なかなか古い体質からの脱却がしづらい企業です。
僕が現在進行形で勤めていて、『これは他の企業にはないだろうな』とか『今時ここまでやる必要があるかね』と思う、銀行独特の文化・風習をいくつか紹介します
みなさんが転職や就職を考えられているのであれば、こういった文化に耐えられると思うかどうか、イメージしてみるとよいかもしれません。

 

 

紙文化


銀行は大量の紙に埋もれています。

 

 契約書

 

相手が個人でも法人でも、すべての契約は基本的に紙です。
銀行の窓口にいって振込を行う際、必ず振込伝票を書かされると思います。
口座を作る時も、必ず口座開設申込書などに記名が必要になりますね。

 

法人との間の契約は、当然かもしれませんが、分厚い契約書を紙で製本します。
今のご時世、お互いの取り決めはメールでもPDFファイルに電子署名でも良さそうなものなのですが、なんでもかんでも契約書や覚書の形で物的証拠を残さないといけないルールになっています。

 

 

 社内文書

 

何かをするに際して上司の許可を得るためにあげる社内文書を稟議といいます。
また、何かをしたことについて上司に報告するためにあげる社内文書を報告とか記録文書と言ったりします。

 

こういった社内決裁・報告の文書も、すべて紙の回覧になっています。
特に稟議は、決裁が下りなければその申請事項を行うことができない、大事な社内文書という扱いなので、稟議フォーマットに必要事項を記載し、それを刷りだした紙を回覧するフローになっています。

 

ちなみに、箸の上げ下げまで決裁が必要というわけではありません。
社内で稟議決裁が必要な項目というのがルールで定められているので、それに合致する項目は稟議が必要、ということです。
逆に、稟議決裁が必要な項目ではない場合は、一応上司に報告しておいた方がいいなと思うことは記録文書を残すことが求められ、この場合には記録文書フォーマットに必要事項を記載し、それを刷りだして紙で回覧するフローになっています。

 

特に報告については、紙を刷りだして回覧することがマストになっていることばかりではありません。
社内メールで履歴を残すとか、営業日誌に記録しておいて済ますとか、千差万別です。
イメージでいうと、正式に紙で残した方がいいと思うような大事な事実についてのみ、紙で報告をあげる、という感じです。

 

いずれにしても、社内の稟議・報告は、基本的に紙回覧の文化が根強く残っています。
ただ、2020年のコロナ禍を受けて、この文化は少しずつ廃れつつあります
完全になくなるかは微妙なところですが、これまでの旧体質からは抜け出そうとしているところです。

 

 

 指図書

 

銀行には、フロント部隊とバック部隊があります。
ざっくり言うと、フロント部隊は顧客との取引を取ってくる営業的部隊。
バック部隊は、その取引に付随する事務遂行を受け持つ部隊です。

 

フロント部隊は、取引にあたって資金決済(口座から口座にお金を動かす)指図をバック部隊に行います。
バック部隊は、その指図を受けて実際に伝票を書いたり、伝票を持ち込んだり、社内のシステムに取引記録を残したり、顧客あての帳票作成・郵送を行ったりします。
このバック部隊に対する指図も、すべて紙で行います。

 

指図書は、定型的なフォーマットが決まっていて、指図したい内容によってフォーマットを使い分けます。
必要な事項を記載し、(後ほど説明しますが)担当者と確認者の印鑑を押してバック部隊に回付します。
こんなことこそメールとかワードファイルの送信でよいのではと常々思いますが、銀行の悪しき習慣の一つです。

 

 

印鑑文化

 

その人の意思表示手段として、印鑑が絶大な力を持ちます。

 

 対顧客

 

まず、契約書には印鑑が必須です。
しかも、届け出ていただいている印鑑でなければ、その契約書を受け入れることができず、異なる印鑑であれば相手に契約書を突き返します。
届け出ている印鑑かどうかは、届出書に捺印されている印影と、契約書に捺印されている印影を目で見て突き合わせて確認します。

 

これは、お金が絡むので念入りに、という精神だと思っています。
実は全然別の第三者が悪意を持って押印して契約書を提出した場合に、印影が微妙に違うけど会社名とかがあってるからまぁいいか、を看過するわけにはいかない、ということです。
自分の口座から多額の振込や引き出しを行う際、口座開設時の印鑑を依頼書に押す必要があると思いますが、このときも銀行員は印影のチェックを行っています。

 

とはいえ、印影から印鑑を精巧に偽造することもできる世の中になってきています。
印鑑のチェックだけでは不十分だと思うのですが、旧体質が根強く残っています。
最近では、電子上の署名・スタンプなども新しい技術として登場してきており、そう遠くない将来に取って代わるかもしれません。

 

 

 社内

 

先ほどの、稟議・報告・指図書、すべてに自分の印鑑が必要です。
自分の印鑑を押している=書かれている内容を承知している、という意思表示になります。
自分の印鑑は、社内で登録申請が必要なので、登録してある印鑑以外は使えません。
とはいえ、さすがに社内文書の自分の印影をだれかに突き合わせられることはありません。

 

メールであれば、送信者がシステム上でバッチリ記録されるので、ハンコでなくても良いとは思います。
エクセル・ワードファイル等は、作成者を後から変更できたりするので、だれが作成して承認したか、という点においては意思表示の妥当性が少し弱いような気がします。

 

これは蛇足ですが、社内でも信頼されている担当もいて、その人が印鑑押してるなら俺も(特に内容を見ないで)押しとくか、というケースが結構あったりします。
信頼を勝ち取るには、実績の積み重ねが重要です。

 

 

再鑑文化

 

銀行員の『堅い』イメージは、まさにここに通ずるものがあります。

 

 再鑑とは

 

再鑑とは、書類を作った担当とは別の第三者(基本的に上司)の目を通すことです。
再鑑者の印鑑が押されて初めて『再鑑された』ことになります。
要するに、別のひとの目で再度内容に不備がないか確認するということです。

 

一番わかりやすいのは、銀行の窓口でお金のやり取り(入出金・振込等)をするときです。
例えば振込を行う場合、あなたから手渡されたお金が、振込申込書に記載された金額と一致しているか、窓口の担当者とは別の第三者(たいてい窓口の裏にいる別の行員)がチェックしていると思います。
スーパーやコンビニで買い物をするとき、お釣りがレジに表示された数字と一致しているかどうかを、第三者の目で確認したりしないですよね?
このあたりは、銀行員ならではのお金に対する厳しさでもあります。

 

 

 再鑑をするシチュエーション

 

先ほど書いたように、お金が絡むときは再鑑必須です。
一人の目視だけではお金は動かせません。
たまにあるとはいえ、着服などのニュースがほとんどないのは、こういった社内体制がとられているからです。

 

社内の稟議や報告、指図書もすべて再鑑が必要です。
担当一人が勝手に何かするということはできません。
牽制がきいていて正確性があると思うひともいれば、自由がなくて億劫だと感じるひともいるかもしれません。

 

また、顧客に提示する書面や、社内に報告する各種数字も再鑑が必要です。
顧客に提示する書面とは、例えば提案書だったり、通知文書などを指します。
書いてある内容に不備があれば、クレームや損害賠償等の事案に発展するおそれもあるため、外部に提出する資料は必ず再鑑が必要になります。

 

取引先との間で生まれた収益や預かり資産残高の社内報告をする際にも、報告メモに記載されている数字が実際の収益等と一致しているかどうか、一桁単位まで再鑑が必要です。
銀行員にとって、数字の桁間違えや足し算引き算漏れなどは死活問題になるため、行員ひとりひとりの集中力と、第三者の目を入れることによる体制整備によってリスクを極小化しているのです。

 

こういった文化がなじむ・なじまないというのは、ひとによって様々かとは思いますが、慣れの問題でもあります。
僕ももともと神経質な人間でもないし、今でも自分のことは適当な人間だと思っていますが、仕事だと思えばやるしかないし、慣れてしまえば当たり前にもなってきます。

 

 

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