半沢直樹のウソ・ホントを教えます
少々大げさすぎる描写もあります。
✔ 本記事の内容
・グループ会社の社員を見下す
・居酒屋で仕事の話
・派閥間抗争
日本経済新聞の有料会員向けに、半沢直樹とリアルの差に関する記事が投稿されました。
この夏、TBS系で放映されたテレビドラマ「半沢直樹」が大きな話題になった。正義感の強い銀行員の主人公が闇を抱える巨大権力…
会員でないと冒頭以降は読めませんが、要するに半沢直樹のドラマの描写がメガバンクの実態と比べてみて『リアル』『大げさ』と項目ごとに論評しています。
門外漢のコメントだと信ぴょう性がないですが、『あるメガバンク入行4年目の田中英太さん(仮名、28)』に取材した結果を載せているので、記事の内容はなかなか的を得ているように感じました。
僕も現役銀行員の立場として、田中英太さんの評価を評価してみたいと思います。
銀行への就職・転職を考えている方は参考にしてみて下さい。
人事権が社内政治に利用される
こんなことしたらパワハラです。
✔ 人事権が政治利用されることはない
記事では以下のように書かれています。
これについては、僕もその通りだと思います。
まず、人事権を持っているのは人事部または在籍する部の部長です。
人事部から『Aさんを異動させたい』という話が部長に入り、部長が理由をつけて断るかOKするか、となります。
部長が部下に対して、『俺の言うことを聞かないと出向させる』なんて言ったら、社内のコンプライアンス事案です。
まず間違いなくこんなことはありません。
人事部から『俺の言うことを聞かないと出向させる』なんてダイレクトに言われることもありません。
そもそも自分と人事部の間に業務上の指令関係はないからです。
以上が一般的な話になりますが、部長・役員・社長クラスになると『絶対にないか』と問われると何とも言えません。
まぁでもないと思います。
というか、結局のところこのクラスになってくると実績や上司の意向に沿った動きをできるかどうかが昇進の決め手になるので、『俺の言うことを聞かないと出向させる』とわざわざ言う必要はなく、結果が出ないなら昇進はさせないよ、というだけです。
あえてニュースになっちゃうかもしれないようなリスクを冒すことはなくて、人事権を盾に権力を振りかざす必要もないわけです。
グループ会社の社員を見下す
むしろ子会社にうまく動いてもらわないといけないので、仲良くやります。
✔ グループ会社によるかもしれない
記事では以下のように書かれています。
『グループ会社』といっても、タイプによって分かれると思います。
例えば、証券会社やリース会社だと、銀行にとってもグループ会社ではありますが、扱う商品が違う=主従関係にはないわけで、見下すとかこき使うとか、そういうことはありません。
そもそも銀行のお客さんが証券会社を紹介してほしいと言われたら、銀行員は証券会社の人にうまく立ち回ってもらわないといけないから、銀行員は証券会社の社員と仲良くやらないと、と考えます。
実際、銀行・信託・証券あたりはどちらが上とか下とかもあまりなく、フラットな目線でグループ内の付き合いがある印象です。
一方で、特定の事務だけを扱うグループ内子会社だと、『心の中では見下している』ということは正直あります。
やっぱり機械的な事務だけを扱う子会社には、それなりの仕事しかできない銀行員が異動・出向していきます。
転籍になった後は子会社の給料になるわけですが、銀行に比べると確実に低い水準です。
銀行員からすると、彼らにもしっかり仕事をしてもらわないと自分のお客さんに迷惑をかける可能性があるから、表向きは仲良くやります。
ただ、心の中では『ここにはいきたくないな』とか『事務ばっかりやってるのに偉そうだな』とか思ったりします。
逆に子会社の社員からすると、銀行員が『偉そうに指図しるひと』とか『つまらない仕事ばっかり依頼してくるひと』と映っている面もあると思います。
いずれにしても、銀行員が証券会社の社員に向かって『銀行の言う事を聞いてればいいんだよ!』といった会話ややり取りはリアルではありません。
証券会社や信託銀行に就職・転職を考えているかたは安心してください。
居酒屋で仕事の話
普通にあります。
✔ 居酒屋で仕事の話をすることは(よく)ある
記事では以下のように書かれています。
これについては、ダウトです。
新人研修で、居酒屋で仕事の話をするのはダメと教わった、はある意味で本当です。
『仕事の話』をもう少し掘り下げて考える必要があります。
取引先の非公開情報を居酒屋で話すのはご法度です。
また、そもそもどんな会社と取引があるのかが分かってしまうことが問題になりうるので、取引先名を居酒屋で口にするのもNGになる可能性があります。
なので、居酒屋で取引先の話を大声でするのは×といえます。
僕もこの点については注意しますし、これは何も居酒屋に限った話ではなく、電車や家庭でも同じです。
一方、会社の中で『あの部署のあの人は優秀』とか『この業務が大変だ』などの一般的な話はよくします。
むしろ会社の飲み会になるとこんな話ばっかりです。
会社の飲み会で業務とか社内の話もしなかったら、趣味とか休日の話をしないといけないわけですが、これでは2時間も持ちません。
で、こういった話になると取引先の情報をちょいちょい出てきます。
結局、飲み会の場で取引先の話も触れられないことはないということになります。
居酒屋でも、個室で周りに聞かれることがなければ、常識の範囲内で取引先の話を出すことは普通にあります。
もちろん、正式な会社のルールとしては〇ではないですが、実際の飲み会ではあまり守られていないルールといえます。
派閥間抗争
よく聞くのはみずほグループの興銀びいきですね。
✔ 派閥による抗争はある
記事では以下のように書かれています。
現実にもメガバンク3行はいずれも複数の銀行の合併によって生まれた。畑中さんは「今でも上層部の間では『どの銀行出身なのか』という会話が頻繁にあり派閥意識は残っている」と推測する。畑中さんが出席した新人研修では「なぜ役員になれたと思うか」との質問に役員が「わからない。7割が運だと思う」と回答。畑中さんは「同じ派閥の上司が出世したから、その人も出世できたのでは」といぶかる。
以前に比べるとだいぶなくなってきた気はします。
ただ、結果だけ見るとやはり派閥間の争いはあると思わざるを得ないです。
よく話題にあがるのは、みずほです。
みずほフィナンシャルグループの各社主要どころの社長は、ほとんど興銀出身者で占められています。
過去は、銀行・信託・証券のトップの座を興銀・富士・第一の各出身者で分け与えられていました。
システムダウンなどで何度か失態を犯し、そのたびに興銀の力が強まってきたような印象を受けます。
このあたりの話は、よくZAITENに書かれるので、興味がある方はバックナンバーを読んでみてください。
三菱UFJフィナンシャルグループは、もともと三菱がUFJを吸収する形だったから、今も三菱出身者が役員に多いです。
三井住友フィナンシャルグループは、もともと住友が強かったから、住友出身者が昇進しやすいといえると思います。
みずほフィナンシャルグループは、3行対等合併と言われたから、『裏では興銀が牛耳ってる、何が台頭合併だ』とマスコミのおもちゃにされがちなのです。
実力主義で昇進していくのが一番いいと思うし、業界全体としてもそういう方向に進みつつあるのですが、結構難しい話でもあります。
『実力』といっても、仕事は一人ではできないし、結果を完全に数字にして比較もできません。
どうしても評価には主観が含まれてしまいます。
そうなると、やっぱり多少なりとも派閥の影響が出てしまうことになると思います。
とはいえ、3メガバンク体制になってから20年近く経過しました。
合併以降に入社した社員は、旧行がどこという色付けはされていません。
これから就職・転職するひとはあまり気にしなくてよいとは思いますが、もしも役員を目指すような志豊かなかたは、自分が仕える上司が旧どこであるかなども考えた方が(考えないよりは)良いかもしれません。
僕はまっったく考えてないし、気にもしていませんけどね(笑)