【就活戦線でメガバンクの人気復活?】定年まで働き続けるのはオススメしませんが…

  • 2023年11月1日
  • 2023年11月13日
  • Banker
 
就職先・転職先にメガバンクを考えている人『年収を考えるとやっぱり金融機関に勤めたいとは思います。中でも3メガバンクは事業規模も大きいし、収益性も安定していて将来安泰だろうし、給料の水準も日本平均より遥かに高いし、就職先・転職先としては申し分ですよね。Yahoo!のニュースでもメガバンク人気復活、と掲載されていましたが、実際のところどうなんでしょうか?』

 

こういった疑問にお答えします。

 

この記事の内容

 

 

・Yahoo!ニュースの記事について解説
・メガバンクのデメリット

 

 

僕は、メガバンクに勤めていた元銀行員です。
三菱とみずほの両メガバンクを経験しており、妻は現役の銀行員をしています。
そのため、一般的な銀行員と比べて、より標準的な銀行員がどんなものであるかをご説明できると思います。

 

さて、メガバンクといえば、三菱・三井住友・みずほ、があげられます。
いずれも日本を代表する超巨大企業で、純収益は3行合算で3兆円にも上ります。
財務基盤もしっかりしていて、収益性も高く、終身雇用を前提とするならばこれ以上ない企業と思われます。

 

一方で、ここ数年はコストカットの必要性から人員削減のニュースも流れ、就職先としてはランキング上位から脱落する傾向にありました。
フィンテックの台頭などで銀行の優位性に疑問符がつき、ベンチャー企業などの成長産業に優秀な人材が多く流れていたと感じます。

 

そんななか、Yahoo!のニュースで『就活戦線でメガバンクの人気復活』という記事が掲載されました。
何人かのコメンテーターの発言も記載されていますが、彼らは銀行員ではありません。
実際のところはどうなのか、元銀行員の目線で解説します。

 

 

 

 

Yahoo!ニュースの記事について解説

 

元銀行員が実際どうなのかをコメントしていきます。

 

 新しい発想のひとは潰される?

 

 

近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「就活と産業、どちらの役割から語るかで全然違う」と話す。
「就活の観点から言うと、“就職ランキング”が一番良くない。採用人数も採用スタンスも違うからだ。何社も経験した人間としては、自分がどういうタイプの人間かをまず自己分析した上で、合った会社に入るのがいいと思っている。新しいことを生み出したい人と、ルールどおりの仕事をすることが好きな人、これはやはり適性の問題だ。銀行という世界は完全に後者で、特別おもしろいことや新しい発想をしている人は潰される。でも、それはそういう業態ゆえなので、向いていると思う方は金融業界に行けばいい」

 

 

就職ランキングが良くない、というのは同意見です。
世の中の就職活動生たちが求める職場は一律ではありません。
大学入試みたいに、偏差値が高いほど優秀(もちろんそれだけが判断軸ではないですが)、という類のものではなく、働きやすさや仕事内容、労働時間や給料、福利厚生など、多種多様な判断軸があるので、序列をつけるのがそもそも間違いだといえます。
自分の適性や条件になるべく沿う会社に入社するのが、そのひとにとってプラスだと思います。

 

それで、仕事の内容も多種多様であり、簡単に二分するようなものではないのですが、仮に「新しいことを生み出したい人』と『ルール通りの仕事をすることが好きな人』に分けた場合、銀行が後者に適するかといわれると、疑問符がつきます。

 

確かに銀行はルールや規定が多く存在し、マニュアル通りに動く必要は多少なりとも存在します。
しかし、マニュアル通りの既存ビジネスだけでは立ち行かないから、M&Aアドバイザリーやストラクチャードファイナンス、アセットファイナンスなどの手数料ビジネスに手を出しているわけです。
むしろ、今時のメガバンクは、これまでの常識を覆すような新しい視点を取り入れることに注力しています。

 

『特別おもしろいことや新しい発想をしている人は潰される』なんてことはなく、むしろそうした人の意見やアイデアを活用したいというのが経営のビジョンだと思います。
もちろん『銀行』という巨大インフラを支える上で一定程度の常識は必要であり、あまりにもかけ離れた人はそもそも面接で落とされるでしょう。

 

 

 2社目にメガバンクを選ぶ人はいる?

 

 

一方で、水谷氏は「銀行の採用は、昔でいう“右へ習え”という人をあまり採らなくなってきている。例えば、公務員の人やコンサルの人を採用したり、1社目でベンチャー企業に入り、そこでやった新しいことを活かしたいというかたちで入行する方も多くなっている」と指摘する。

 

 

この意見には概ね賛同します。
確かにメガバンクに中途採用で入社する人は、増えていると思います。
先ほども述べたとおり、今までのメガバンクにはなかった新しい発想や異分子を取り入れていきたいという考えがあるので、全然関係ない業界の専門家でもメガバンクに入社しやすくなったと言えるでしょう。

 

公務員やベンチャーの人が中途で銀行に入社すると、企業の文化についていくのが大変だという指摘はありえます。
実際、銀行は細かなルールがたくさん存在し、箸の上げ下げも上司の指示を仰がないといけない、なんて場面も少なからずあります。

 

ただ、メガバンクの場合、社員数がとてつもなく多いため、中途採用者向けの研修体制が整っています。
人事部による基礎的な研修もありますし、実際部署に配属された後はその部署や事業の研修も整備されています。
こうしたインフラが整っているので、中途採用の方でも少しずつ職場に慣れていくことが容易です。

 

 

 メガバンクは選択肢が多い?

 

 

ただの元人事さんは「僕が銀行に入るにあたり、“安定が~”とか“向いているから~”とかは関係なく、やはりお金の勉強ができ、次のステップにできる点。自己分析しても正直わからないから、何社か経験することになるはずだ。学生は銀行に行ったほうがいいと思うタイプだが、選択肢が本当に広く、いろんな業界の勉強もできるので、何か違った時に修正がきく。僕の周りで辞めた人はみんな『最初銀行でよかった』と話している」と説明した。

 

 

この意見も概ね正しいと思います。
昨今人手不足が叫ばれており、メガバンクが嫌になってどこかに転職しようと思えば、条件を下げれば十分に余裕だと思います。
実際、僕も40歳手前で転職活動をしましたが、3週間程度で内定を獲得することができました。
銀行員の緻密さが身につけば、どんな企業でも本部系機能で働いていくことは可能だと思います。

 

メガバンクはグループの規模も大きく、やりたいことが見つからない学生には向いているとも思います。
人事部も過去のヒストリカルからどんな人がどんな部署に向いているか、十分に知見があります。
従って、自分で適性がわからなくても、人事部が勝手に見抜いてくれるわけです。

 

さらに、配属先の部署が違うなと思えば、異動の希望を出せば済む話です。
グループの中には数えきれないほど多くの部署が存在します。
やっている業務も玉石混交で、何かしら自分の適性に適うものがあるはずです。
そもそも銀行は金融庁のお達しで、同一部署に長期滞留できません。
待っていればそのうち別の部署に異動となります。

 

一方で、一つ申し上げておくと、メガバンクからどこか別の会社に転職しようとした時、必ず年収がハードルになることは留意が必要です。
メガバンクの給与水準は世間一般から比べるとめちゃくちゃ高いです。
30歳で1,000万近くまでいくし、40歳で1,500万くらいは目指すことが可能です。
そんな状況から別の企業に転職しようとしても、同じくらいの年収を叩き出せる会社が世の中には少ないのです。
年収をベースに転職活動をしようと思うと、結局別の金融機関しか候補に入ってこず、苦労する可能性があることは念頭においた方が良いでしょう。

 

 

 片道切符の島流しは存在する?

 

 

では、メガバンクもある種の“踏み台”と捉えられるのか。「そう思う瞬間がやはりある。僕が入社した年の9月か10月、最初の辞令発表があった時に、“◯◯君”と部長室に呼ばれた40歳過ぎのおじさんが泣きながら出てきた。そうしたら、“クレジットカード会社に行くことになりました”と。結局は40歳で銀行を引退する、片道切符の出向に行ってしまうのを間近で見ると、いろんな選択肢を持っておかないと不安になるというのは正直なところだ」と述べた。

 

 

これについては部署や銀行員によってまちまちなのかもしれません。
15年程度メガバンクに勤めた僕の経験からすると、30代や40代で子会社に異動になるケースは少数ですが確かにありました。
ただ、片道切符ではなくて普通に戻ってきました。
その子会社が多難な時期なので、優秀な本社の社員がほしい、という理由で子会社に異動になるケースも多々あります。

 

メガバンクも人口ピラミッドの歪さには頭を悩ませています。
できれば若い人材ほど多く、三角形の構成にしておきたいのですが、50代が多い頭でっかちな構図になりがちです。
人員削減のニュースが出ているものの、優秀な若い人材は多く雇用しておきたいのです。
そんな環境下で、40歳そこそこで片道切符の島流しにさせられるというのは、そもそもその社員が相当な問題児だったり、成績があまりにも悪いといった理由がなければ想定しにくいと思います。

 

大体、子会社に異動が言い渡されて泣くというのがあまり理解できません。
希望する異動は、自分の能力と成績で勝ち取るものです。
50代になると片道切符的な異動を見ることも多少はありますが、それまでの働きと相関するものだと理解しています。

 

 

メガバンクのデメリット

 

あえて申し上げれば、という視点で述べます。

 

 社員数が多いので、変なのもいる

 

金融機関の中でもメガバンクはダントツで社員数が多いです。
三菱UFJフィナンシャルグループは、グループ全体で社員数が10万人を超えます。
それだけの規模になると、どうしても変な社員が一定数存在します。

 

メガバンクというと、東大や京大、早稲田や慶應などの名だたる高学歴集団というイメージがあると思います。
実際その感覚は正しくて、僕もメガバンク時代は周りの銀行員ほぼ全てが偏差値60以上の大学卒でした。
ただ、学歴=仕事ができるわけではないし、学歴=コミュニケーション力が高いわけでもないんですよね。

 

社員数が少ないと、採用時のフィルターがかかりやすいので、企業風土にマッチしなそうな人は結果的に振るい落とされます。
しかし、社員数がめちゃくちゃ多いとどうしてもフィルターの目が荒くなりがちで、企業風土にマッチいしない異端児が紛れ込みやすいのです。
学歴と略歴書だけで判断され、どうにもうまくコミュニケーションできないような銀行員も、一定数存在してしまい、彼らが仕事のできる組にとって目の痛い存在になりがちです。

 

 

 給与水準が高すぎる

 

先ほども述べた通り、メガバンクの給料は相当高いです。
30歳で1,000万円近く、40歳で1,500万円も決して夢ではありません。
福利厚生もしっかりしているし、各種手当も厚いです。

 

ただ、それが理由で『転職しにくい』環境を生み出しているともいえます。
メガバンクに勤めているときと同じくらいの生活水準を求めようとすると、自然と同じくらいの給与水準を求めます。
ただ、1,000万円とか1,500万円くらいの水準を求めると、サラリーマンだと金融機関に限定されます。
なので、給与水準を変えずに『全く違う世界に転職する』というのはハードルが高いと思います。

 

対策としては、メガバンクで給与水準が高くても、生活水準をむやみやたらに引き上げないことです。
高い給与を前提として住宅ローンを組んだりすると、どうしてもそこから抜け出しにくくなります。
給与が高くても、一定程度は投資や貯蓄に回す余裕を持つと良いでしょう。

 

 

 全国転勤は避けられない

 

やはり、メガバンクだとどうしても全国転勤はさけられません。
近年は合理化のために地方の支店を閉鎖していってますので、地方転勤の確率は下がってますが、それでも0%にはできません。
メガバンクの中でも専門的な分野や本部畑のキャリアを歩めばやはり地方転勤の蓋然性は下がりますが、やはり0%にはできません。

 

海外転勤は望まない限りありえないといって差し支えないと思います。
銀行の人事部としても、社員を一人海外に転勤させるのはかなりのコストがかかります。
そこまでコストをかけるのだから、やる気と実力のあるものしか海外には転勤させません。
やはり、問題となるのは全国・地方転勤となります。

 

地方転勤になると家族を連れていくのか、子供の学校をどうするのか、家をどうするのか、などなど本当に様々な考慮が必要となります。
それまで考えていたライフプランが崩れてしまうし、全国転勤がありうるからこそ、家を購入するという判断ができない、ということもあります。

 

これはメガバンクならではの最大のデメリットですが、人事面談で『地方転勤は嫌だ』『本部がいい』とはっきり伝えることである程度回避可能です。
ただし、希望を叶えてくれるかどうかは、それまでの仕事の成果ともリンクしますので、自己啓発含めて日頃の行いがモノをいうことになるでしょう。

 

 

 まとめ

 

いかがだったでしょうか。
本ブログでずっと言い続けているように、メガバンクで働くというのはこのご時世でかなりメリットが大きいと思っています。
残業時間も過大ではないし、ノルマの概念も薄れつつあるし、仕事の内容も多岐に渡るし、給与水準も非常に高い。
ここ数年は銀行不人気の時代が続いていたから、逆に穴場的な立ち位置になっていたと思います。

 

今回のYahoo!の記事や就活ランキングで取り上げられると、人気が復活してしまい、ライバルとの競争が熾烈となります。
とはいえ就活も転職活動も、受けるだけならタダですから、せっかくなら応募してみると良いのではないでしょうか。

 

 

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