TOKE MATCHについて考察【最近話題のトケマッチって怪しい?】

  • 2023年9月5日
  • 2024年3月19日
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TOKE MATCHについて興味がある人『ロレックスなどの高級時計を趣味で複数本もっています。最近、トケマッチというサイトで時計を貸し出す副業ができるとニュースで見ました。自分の持っている大事な時計を見ず知らずの人に貸し出すのは怖い気がするし、でも収入は結構な金額になるみたいだし…活用すべきか悩んでいます。』

 

最近話題のTOKE MATCHについて、元銀行員の目線で考察します。

 

トケマッチとは?

 

高級時計の貸し手と借り手を繋ぐサービスです。

 

 TOKE MATCH(トケマッチ)とは

 

TOKE MATCH(トケマッチ)とは、高級時計の貸し手と借り手を繋ぐサービスを提供するサイトです。
貸し手のメリットは、普段使わない時計を眠らせるのではなく、第三者に有償で貸し出すことで収益を上げることができます。
借り手のメリットは、高嶺の花と思われていた憧れの高級時計を毎月定額支払うことでレンタルすることができます。
トケマッチのメリットは、借り手から受領する月額の収入から、貸し手に支払うレンタル料の費用を差し引いた差額が儲けになる、というものです。

 

腕時計の価格はこの数年で急激に上昇してきました。
僕がロレックスのデイトナを購入した2020年8月は、まだ定価130万円台でしたが、足元2023年9月は定価が200万円近くまで高騰しています。
約3年間で65万円ほど、ざっくり1.5倍にまで値上がりしたことになります。
一方、この3年間で日本人の平均的給与は全然上がっていません。
高級腕時計を着用したいと思っていても、給与の上昇が腕時計の価格上昇に追いついておらず、働けど働けど高嶺の花との距離は開く一方な状況にあるわけです。

 

そんな中で、トケマッチのサービスは確かに貸し手と借り手の双方にメリットをもたらすかもしれません。
高級腕時計を何本も所有している人は多くいますが(僕もその一人)、そのうち何本かは使わないでタンスの肥やしになってしまっていて、もったいない。
それを誰かに貸し出して収入を得ることができるのであれば、金銭的メリットは大きいですよね。
借り手も、高級腕時計を購入するための多額の資金を用意しなくても、月額1万円からでレンタルが可能となり、一時的な欲求を満たすことができます。

 

 

 価格設定

 

まず、貸し手側の月額預託手数料です。
貸出を行う腕時計の評価額(時価)に応じてテーブルがあります。
評価額30万円以下の時計については、執筆時点(2023年9月)では一時取り扱い停止となっています。
貸し手側は、仮にその時計が借りられなくても収入を得ることができます(3か月レンタルされないと減額制度あり)。

 

 

 

 

評価額60万円以下→月9,900円
評価額100万円以下→月14,900円
評価額150万円以下→月19,900円
評価額150万円以上→ASK

 

 

続いて借り手側の月額レンタル料金です。
貸し手側と同じようにテーブルが決められており、月額が高いほどより高級な時計をレンタルすることができます。

 

 

 

 

評価額30万円以下→月額9,800円
評価額60万円以下→月額19,800円
評価額100万円以下→月額29,800円
評価額150万円以下→月額39,800円
評価額150万円以上→ASK

 

 

仮にすべての時計が空白なしで貸し出しに出せたと仮定した場合、トケマッチの儲けは両者の差となりますので、腕時計1本あたり以下の通りの金額となります。

 

 

評価額30万円以下→4,900円/月
評価額60万円以下→9,900円/月
評価額100万円以下→14,900円/月
評価額150万円以下→19,900円/月
評価額150万円以上→ものによる

 

 

怪しさをぬぐい切れず、僕は活用を見送ります

 

手持ちのミルガウス116400GVを貸し出そうかと思ったのですが…。

 

 ミルガウスをレンタルに出そうかと考えた

 

執筆時点で僕が所有する腕時計は以下の5本です。

 

 

ロレックス/デイトナSS黒文字盤(Ref.116500LN)
ロレックス/スカイドゥエラーSS青文字盤(Ref.326934)
ロレックス/デイトナオイフレチョコ文字盤(Ref.116515LN)
ロレックス/サブマリーナデイトコンビ青文字盤(Ref.126613LB)
ロレックス/ミルガウス黒文字盤(Ref.116400GV)

 

 

このうち、ミルガウスだけが投資目的で中古で購入したものになります。
2023年3月に予想通りディスコンになったのですが、思ったように値上がりせず、売却の機会を逸しています。
持っておいても着けることがなく、もったいないので、せっかくならトケマッチで貸し出しに出そうかなと考えました。

 

ミルガウスの時価は、2023年9月現在で約130万円ほどになります。
したがって、借り手がいたと仮定すると、借り手側のレンタル料は39,800円/月となります。
貸し手側(僕)の収入は19,900円/月となり、年間だと19,900円×12=238,800円となります。
かなりの副収入になるのでこれはいいなと思ったのですが、以下に挙げる通り、考えれば考えるほど怪しさ満点で少し怖いなという思いが強くなりました。

 

 

 借り手側のレンタル料が高すぎる

 

まず、借り手側のレンタル料金が高すぎます。
ミルガウス1本レンタルするのに、毎月39,800円です。
年間だと39,800円×12=477,600円です。
これだけあればグランドセイコーくらいなら余裕で買えます。
ここまで金をかけて時計を借りたいと思うユーザーが本当にいるのか疑問です。
しかも、レンタルなのでいくらお金を払い続けてもその時計は自分のものにはなりません。

 

そもそも、並行店で腕時計を購入する場合、60回払いの無金利ショッピングクレジットローン等が用意されています。
金利0%なので、ミルガウス130万円を購入すると毎月の支払は元本相当の130万円÷60回=約22,000円/月となります。

 

 

 

 

仮に時計の時価が1年間で変動しないとした場合、トケマッチでレンタルするのと並行店で購入するのとでは、次のような経済性となります。

 

 

【トケマッチでレンタル】
・1年間レンタル料=39,800円×12か月=477,600円
・時計は手元に残らず
・477,600円支払ってお仕舞

 

 

【並行店で購入】
・1年間元本支払い=22,000円×12か月=264,000円(残債1,036,000円)
・1年後に時計を売却して130万円回収
・130万円で残債1,036,000円の支払い+支払い済み264,000円に充当し、実質支払い額0円
・手元に時計は残らず

 

 

上記のように、1年後に時計が手元に残らないのは同様ですが、実質支払った額が0円と477,600円で雲泥の差となります。
仮に1年後の時計売却価格がダダ下がりしたとしても、その値下がり幅しか手出しはありません。
値下がり幅が477,600円を上回るならレンタルの方が結果的に得だったということになりますが、約50万円値下がりするということは1年後のミルガウスの時価は80万円ということです。
こんな事態はそうそう考えにくいです。

 

果たしてこんな価格設定で本当に借り手がつくのかなというのが疑問です。
もちろん、金融リテラシーの低い低所得層には刺さるのかもしれませんが、銀行員をやっていた僕には到底理解できません。

 

 

 実際、借り手の声が聞こえない

 

Twitterでトケマッチを使って腕時計をレンタルしてみた、という声がないか調べてみたのですが、本当にツイートがないのです。
トケマッチの貸し手側の声はよく出てきます。
『こんなに儲かった』みたいなツイートを連呼する方も多く、確かに惹かれる内容になっています。
WEBで検索しても、やはり貸し手側の声や、レンタルに出して儲かった、レンタルするとキャンペーン適用できる、等のサイトばかりで、借り手の声はなかなか見当たりません。

 

貸し手側は、アフィリエイトで儲けるために良いコメントを残しているに過ぎないと思われます。
要するに、自分のコメントやWEBサイトでトケマッチに登録・レンタルさせることで、トケマッチから自分と紹介者にメリットを与えることで、自社にとっては一種の宣伝効果を生み出しているわけです。
したがって、『こんなに儲かった』という声はアフィリエイトに閲覧者を誘導してそこから収益を得ようとしているものであり、本当に信じてよいのかは甚だ疑問と言えます。

 

ただ、借り手側の声が(特にTwitterで)聞こえないのは、レンタルで高級な時計を使っているとつぶやくのが恥ずかしいという感情があるから、かもしれません。
見栄を張っていると思われる可能性もあるので、なかなか公共の場に晒しにくいのもあるでしょう。
なので、実際には借り手がいないんじゃないかというのは僕の邪推なのかもしれません。

 

 貸し手側の利回りが高すぎる

 

ミルガウスをレンタルに出す場合、貸し手側(僕)の収入は19,900円/月となり、年間だと19,900円×12=238,800円となります。
ミルガウスの時価が130万円ですので、利回りは238,800円÷1,300,000円=年率約18.4%となります。
日経平均株価の期待利回り率は年率で約2%~3%と言われる中で、利率が良すぎます。
5年間レンタルに出していたら元本がほぼ回収できるうえに、時計は手元に残るのでそれを売却すれば売却額がほぼまるまる利益になってしまいます。

 

利率が高すぎる=怪しい商品だ、と安易に言うつもりはありません。
ただ、この商売がまかり通るなら、130万円ショッピングクレジットローン無金利60回払いでミルガウスを購入し、それをトケマッチのレンタルに出せば誰でも年率18.4%を稼ぐことが可能になってしまいます。
ミルガウスを5本貸出に回して、毎月チャリチャリ入ってくる収入を1年間ためれば、それだけで普通にミルガウスを1本自分用に購入できてしまいます。
個人的には怪しいと言わざるを得ません。

 

 

 ビジネスモデルへの疑問

 

このサービスですが、そもそも自社で時計を購入して、それをレンタルに出せばよいのです。
『自分が持ってるものを貸すだけ』と『不特定のユーザーから商品を借りて、それを貸す』だと後者の方が圧倒的に手間だしコストもかかります。
自社で保有する時計を貸し出すだけなら、貸し手側へのレンタル料金も抑えることができるはずです。
もちろん自社で時計を購入するための当初資金が必要になりますが、それは購入する時計を担保に銀行から資金調達をすればよいのです。
ロレックスをはじめとした高級腕時計は資産価値が高く、担保としては申し分ないと思います。

 

例えば100万円の腕時計を1,000本購入するための資金は、100万円×1,000本=10億円です。
10億円を銀行から借り入れ、1,000本の時計のうち500本でもレンタルに回せれば、500本×月額29,800円×12か月=1.8億円となり、5年で返済できます。
しかも、5年後にも腕時計は価値を保ったままです。
なぜこうしたビジネスモデルにせず、あえて第三者から腕時計を借りる、という仕組みにしているのか、どうも腑に落ちません。

 

 

 故障、傷、盗難、すり替えのリスク

 

レンタルした第三者が悪意を持って部品を交換してしまったり、すり替えたり、傷をつけたり、返品されなかったり、といったリスクがやはり残ります。
返品されない=持ち逃げのリスクは、借り手側の勤務先の電話等で一定程度ヘッジされているようですが、完全ではありません。
傷や故障も保険に入っているようなので、オーバーホール代金などは負担せずに済むと思われます。

 

ただ問題なのが、オーバーホールしたからといって完全に元通りになるわけではないのですよね。
傷がついたのを研磨して見た目が綺麗に元通りになっても、結局金属を削っているのでその分時計は痩せてしまいます。
時計好きのマニアの中には、研磨をかけた中古品は買いたくない、という方もいます。
特に自分で所有せずにレンタルしている人にとって見れば、あくまでも自分のものではないから、小傷など気にせずガシガシ使ってしまいがちだと思われます。
まぁこのようなリスクがあるから、ハイリターンが期待されるといえなくもありませんが。

 

一番怖いのは、悪意を持ってパーツの一部をすり替えられるケースです。
外見では判断できないので、レンタルから戻ってきてもそのままにしてしまうと思います。
その後、正規店にオーバーホールの見積もりを出したときに『パーツが変わってるので受けられません』と言われ、トケマッチに苦情を言っても、『元からそうだったんじゃないですか』と言われたら裁判で戦うことになります。
そこまで労力をかけるリスクを、少なくとも僕は負えません。

 

 

 最悪のケースを考えて活用を控えます

 

ミルガウスは投資用に購入した中古品なので、最悪戻ってこなくなってもハイリスク・ハイリターンのテールリスクに巻き込まれたと納得できなくもないのですが、やはりあまりに旨い話なので僕は活用を見送ろうと思います。
世の中、投資はリスク・リターンの見合いです。
ハイリスクの商品はハイリターンが期待されるし、ローリスクの商品はローリターンしか期待できません。
時計を貸し出すことで収益を上げられるというのは今までにない着眼ですし、ハイリターンを求めてハイリスクを取るのも否定するものではありません。
僕には向かないな、という判断です。

 

最悪のケースを想定すると、貸し手側から高級時計を集めるだけ集め、借り手がついている間はその収入で事業を運営し、借り手がつかなくなったら腕時計を売却したお金で貸し手側に配当を行い、それでも首が回らなくなったら破産申し立てして逃げる、ということもなくはないと思っています。
いわゆるポンジ・スキームです。
貸し手側は腕時計の返却を求めようにも、一定期間は待つ必要があるので、その期間に企業が逃げおおせることが可能と言えば可能です。
高級時計は今や換金性が非常に高く、いつでもキャッシュ化できてしまうのもリスクの一つと考えます。
やろうと思えば、預かった腕時計を換価処分して貸し手側に配当しつつ、貸し手側から返却要請を受けた場合にはその時計だけ買い戻して窮地をしのぐ、ということも理屈上可能と思われます。

 

繰り返しになりますが、トケマッチによる腕時計投資はハイリスク・ハイリターンだと思います。
投資は自己責任ですので、リスクを取れる方はやってみてもよいかもしれません。
僕個人としては、かなり怪しいなと思うので活用は控える、ということです。
相応のリスクを取れるよ!という方は、ぜひお試しいただき、感想をお聞かせいただけますと幸いです。

 

 

 

 

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