銀行と信託銀行の違いとは?3メガ信託の比較も解説!【現役銀行員が教えます】

  • 2022年5月17日
  • 2023年10月24日
  • Banker
 
信託銀行に興味がある人『就職先として、銀行ではなくて信託銀行に興味があります。でも、信託銀行といってもいくつもあって、どこがどう違うのかよくわかりません。信託銀行と銀行の違いや、信託銀行間で具体的にどういった差・特徴があるのか教えてほしいです。』

 

3メガ信託の比較をしたいと思います。

 

この記事の内容

 

 

・信託銀行と銀行の違いについて
・3メガ信託の特徴について

 

 

僕は、現役の銀行員です。
ふたつのメガバンクを経験しており、妻も現役の銀行員をしています。
そのため、一般的な銀行員と比べて、より標準的な銀行員がどんなものであるかをご説明できると思います。

 

さて、世の中にはいわゆる一般的な『銀行』とは異なる、『信託銀行』というものが存在します。
僕がその昔就職活動した時も、何が違うのかよくわかりませんでした。
また、信託銀行も大所は3つのメガ信託に分かれていて、それぞれ特徴があります。
今回はそのあたりについて解説していきたいと思います。

 

 

信託銀行と銀行の違いについて

 

信託銀行は銀行よりも専門分野が数多くあります。

 

 信託銀行とは

 

信託銀行とは、銀行の一種です。
銀行ですので、預金業務・貸出業務・為替業務を営んでいます。
『ノンバンク』と呼ばれる業態は、『バンク』ではないので、上記の預金業務・為替業務を行っていません。
ノンバンクは預金業務を取り扱うことができないので、市場や銀行からお金を調達して個人向けローンの貸し出し等を行っています。

 

信託銀行は銀行の一種ですので、いわゆるメガバンクや商業銀行が行う預金業務・貸出業務・為替業務を行うことができますし、実際に取り扱っています。
信託銀行は銀行の3大業務に加えて、信託法・信託業法で定められる独自の業務を行うことが許されています。
独自の業務とは、年金・不動産・証券代行・有価証券受託、などです。
従って、信託銀行は銀行よりもさらに扱える分野や業務が幅広く存在する、と言い換えることもできます。

 

 

 信託銀行と銀行の違い

 

ここまで聞くと、『だったら信託銀行のほうがすごいじゃん』と思うかもしれません。
実際に、銀行では不動産や年金の受託業務を行うことはできない一方、信託銀行でも預金・貸出・為替を取り扱うことはできるので、確かに扱えるフィールドは信託銀行に軍配が上がるでしょう。

 

しかし、取り扱う業量や顧客層に大きな違いがあります。
銀行は、個人であれば幅広くマス層が顧客になりますが、信託銀行の場合は高齢者や富裕層が主な顧客セグメントとなります。
従って、銀行のほうが預金量・数ともに信託銀行を遥かに凌駕しており、信託銀行のほうが顧客層が限定的となります。
法人についても同様で、銀行であれば中小零細企業から大企業まで幅広く融資などの取引を持ちますし、全国津々浦々・世界各国に支店を持つことから顧客基盤が圧倒的に優れています。
信託銀行は支店が都道府県の県庁所在地くらいにしか置かれておらず、世界を見渡しても現地法人の数は限られます。

 

 

 専門性は信託銀行に軍配

 

従って、銀行のほうが扱う額やケタが大きく、世界を股にかけるバンカーを目指すならば商業銀行やメガバンクを選ぶのが良いでしょう。
メガバンクの大企業融資の部隊ともなると、世界を股にかける数々の企業と取引があることから、海外出張や英語を使った取引、融資金額のロットなど、信託銀行の比ではありません。
預金の量も桁が違うことから、市場・運用部門で裁量が与えられる枠も信託銀行とは段違いです。

 

一方で、信託銀行は銀行では扱えない専門業務が強みとなります。
不動産の仲介や年金の受託・運用、証券代行業務などは銀行では行えない独自領域となります。
信託銀行はこのような専門分野で力を発揮しているので、社内にいる人材も専門性の特化が求められます。
1つの分野のトップランナーになりたいという一途な方は、信託銀行のほうが向いているかもしれません。

 

 

3メガ信託の特徴について

 

昨今は違いが顕著になってきています。

 

 3メガ信託とそれ以外の信託銀行

 

世間的に3メガ信託と言われれば、三菱UFJ信託銀行・三井住友信託銀行・みずほ信託銀行の3社になります。
3メガ『バンク』と言われれば、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行になります。
注意して頂きたいのは、三菱UFJ信託銀行と三菱UFJ銀行、およびみずほ信託銀行とみずほ銀行はそれぞれ同じ親会社をフィナンシャルグループとする兄弟銀行に当たりますが、三井住友信託銀行と三井住友銀行は兄弟銀行には該当しません。
三井住友銀行のグループ内信託銀行は、SMBC信託銀行という会社が存在します。
三井住友信託銀行は、他信託と異なり、単体でフィナンシャルグループを形成しています。

 

3メガ信託銀行以外にも信託銀行は存在します。
例えば、先ほど述べたSMBC信託銀行や、新生信託銀行、資産管理サービス信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行などです。
しかし、銀行に比べるとその数は圧倒的に少ないです。
グループ内に信託銀行を保有している地銀はありません。
信託法・信託業法で求められる分別管理義務や善管注意義務を遂行できるだけの強固な事務基盤基準をクリアできなければ、信託銀行を名乗ることはできないのです。

 

ちなみに、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行、新生信託銀行、SMBC信託銀行がいわゆる一般的な信託銀行なのに対して、資産管理サービス信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行は金銭や有価証券の受託を専門に行う『カストディアン』と呼ばれる信託銀行になります。
ざっくり言うと、カストディアンは事務・管理の専門家で、いわゆる銀行の取り扱う3大業務は行わないですし、不動産・証券代行の営業と言ったフロント業務も扱いません。
カストディアンは、グループ内の信託銀行が獲得した案件のうち、金銭と有価証券の受託・管理のみを再委託の形で引き受けるケースが太宗です。

 

 

 三菱UFJ信託銀行

 

ここからは3メガ信託の比較をしたいと思います。
まずは三菱UFJ信託銀行です。

 

三菱UFJ信託銀行は、2018年に融資業務を兄弟銀行である三菱UFJ銀行に完全移管しました。
従って、三菱UFJ信託銀行は、銀行でありながら融資業務を行わない信託銀行ということになります。
これは3メガ信託の中でも特異な点です。

 

 

日本経済新聞

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は中核子会社を再編する。三菱東京UFJ銀行に三菱UFJ信託銀行の法人融資業…

 

 

融資業務を集約化する一方で、コンサルティングやソリューション力に力を入れています。
要するに、不動産や年金、証券代行といった信託銀行ならではの独自色を強め、専門性の特化に注力しているといえます。
また、そうはいっても同じグループの中にあるので、三菱UFJ銀行や三菱UFJモルガン・スタンレー証券とも接点は強く、互いに人材交流等も行っています。

 

 

 三井住友信託銀行

 

三井住友信託銀行は、三井住友トラスト・ホールディングスの傘下に属する、銀行事業と信託・財産管理事業を一体として展開する専業信託銀行グループです。
あくまでもメガバンクとは一線を置き、独自に銀行融資の分野でも戦っていこうとする集団です。

 

その意味で、国内唯一の『メガ信託』と呼んでもいいかもしれません。
銀行業務もメガバンク伍して戦うし、信託業務についても他の信託銀行と肩を並べて戦う。
八方美人と呼ぶこともできるし、それだけに社員は専門性と汎用性の両面を求められる過酷な信託銀行と言えます。
信託銀行の専門性に興味がある、でも融資にも携わってみたい、そんな方には打ってつけの信託銀行だと思います。

 

 

 みずほ信託銀行

 

みずほ信託銀行は、みずほフィナンシャルグループ傘下に属する信託銀行です。
三菱UFJ信託銀行とは異なり、融資業務は信託銀行内に残置させています。
一方で、グループ一体運営を最も推進している企業であり、みずほ信託銀行の融資業務はみずほ銀行に追随する形をとっています。
従って、融資業務の有無で言えば、三菱UFJ信託銀行と三井住友信託銀行のちょうど中間に位置すると言えるでしょう。

 

みずほ信託銀行は、独自で新卒の採用を行っていません。
あくまでも入社はみずほ銀行からとなり、キャリアパスの途中で希望があればみずほ信託銀行に異動する格好となります。
この点も他のメガ信託とは異なる点です。

 

また、みずほ信託銀行は2016年にグループ傘下のアセットマネジメント機能を集約化し、みずほ信託銀行内の他人勘定運用部門を切り出しました。
もしファンドマネージャーがやりたい!という方は、みずほ信託銀行ではなくてアセットマネジメントOneへの入社・転職を視野に入れた方が賢明でしょう。
アセマネ機能の切り出しもあり、メガ信託で比較した場合には規模感に劣ります。

 

 

 

 

銀行員パパブログ

  銀行に就職を考えている就活生『運用の仕事に興味があるので、銀行や生保を中心に就活しています。でも、実際のところ業務の…

 

 

 まとめ

 

いかがだったでしょうか。
信託銀行と銀行の違い、信託銀行ごとの特徴について簡単にまとめてみました。
それぞれグループごとに独自の戦略を打ち出しており、特徴が微妙に異なってくるのは面白いですね。

 

もちろん、機能やグループストラクチャー以外にも、職場の人材の雰囲気や気質なども異なります。
馬が合う、肌感覚が近い、などの感性の部分は言葉にしにくいので触れませんが、就職・転職を考えている方はぜひ面接でそのあたりも感じ取っていただければと思います。

 

 

 

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