銀行員の将来性や安定性について、社員の立場でお答えします
巷の評判は右肩下がりですが、少々行き過ぎな感じがします。
✔ 本記事の内容
・その他、世間の声と現場の実感
僕は2021年現在、銀行員生活を13年継続しています。
リーマンショックも東日本大震災も経験してきました。
不景気で採用数を絞った時期もあれば、景気拡大の局面で大量採用に舵を切った時期もあります。
また、途中で転職して二つの銀行を見てきたので、それなりに銀行”業界”の標準感覚も持っていると思います。
更に、妻も銀行員ですので、『銀行って大体こんな感じ』という感覚はあるのではないかと思います。
世界的にはGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるように、世の中は空前のITブームです。
仮想通貨や電子マネー、~ペイ、~テック等もその流れでしょう。
こうした最先端の技術が金融の世界にも流れ込んできており、伝統的な金融機関に対する視線は厳しいものになっているのは事実としてあると思います。
実際に僕もつい数年前に比べて現金での支払いが激減し、Paypayやd払い、クレジットカードやiPhone での決済がとても増え、ATMでキャッシュを引き出す機会なんて月に1~2回に減りました。
僕に限らず、世の中の多くの人たちが同じように現金至上主義から脱却しようとしている今、お金を専門に扱う銀行が潮流に抗っていけるのかどうかというのは議論の余地が十分にあるところです。
銀行にとっては厳しい言われ方をすることが多くなってきた昨今。
銀行に就職や転職を目指す人にとって、外野のガヤは気になるところだと思います。
僕個人としては、世間的なビックブームがあってもなくても、近い将来においては大リストラ時代が来るとは思っていないし、悲観的にも思っていません。
機械やAIに取って代わられる恐れのある単純事務作業員にとっては苦しい時代になる可能性はありますが、クビをきられるとすればそこからで、銀行の総合職はまだまだ安泰かつ、むしろこんなご時世だからこそ、職員を重宝する職場環境になっていくのではないかと考えています。
週刊東洋経済の記事
こちらは、週刊東洋経済2021年1月30日号からの抜粋させていただきました。
消える仕事18業種、残る仕事18業種、会社員の市場価値9職種、について紹介されています。
✔ 本書のイメージほど残業は多くない
残業時間は制約が多く、深夜残業なんてほとんどありません。
支店なんて特にそうです。ほぼすべての支店は20時には店を閉めるんじゃないでしょうか。
就職を目指している方で気になる場合は、近くの支店でいつ電気が消えるか見てみるとよいと思います。
銀行に就職することを目指しているひと『銀行員は給料もいいし安定してるけど、残業が多いって噂をよく聞きます。毎日深夜帰…
部署によっては残業時間が多いところもあるかもしれません。
仮にそうだとしても、サービス残業はありません。
パソコンや出勤カード記録がすべて残されており、勤務時間申請との乖離が大きいと人事部から指摘・調査が入ります(そもそも金融庁の目が厳しい)。
残業しても、その分給料がキチンと支払われるなら最悪いいかなと、僕は思います。
✔ 貸倒・延滞先に回収に行くことなんてまずありません
資金の回収を行う部署なんて銀行の中にはありません。
銀行の子会社のサービサーに委託するケースがほとんどです。
延滞している会社・個人に督促行為を行うことは銀行にはできません(弁護士法上の問題)。
✔ ポストの数はむしろ増えている実感です
インターネットや電子決済の普及により、支店やATMが減っていっているのは事実です。
ただ、縮小するだけだと成長性がないので、世界進出を目指したり、手数料ビジネスやコンサルティング業務に重心を移したり、相続やM&A業務に注力したり、と各行様々な展開を打っています。
地銀の多くは足踏みしていてリスクも取らず、金融庁からおしかりを受ける記事もよく見かけますが、ことメガバンクについていえば一定程度の展開はしているとみてよいと考えます。
だからこそ決算は数千億円規模の収益を上げているのだといえるでしょう。
支店の数が減っても、その分他にビジネス展開していれば部署の数は増えます。
結果としてポストの総数は減りにくいのです。
まして、今の50代くらいの職員が多く残っている一方で勝手にクビをきることも出来ず、ポストを無理やりにでも増やさざるを得ないような状況といっても良いように思います。
『支店長』・『部長』ポストに就ける割合は今とそんなに変わらないと予想します。
その他、世間の声と現場の実感
その他、様々な面から銀行の将来性について述べたいと思います。
✔ 配当率
株の配当率が、銀行は比較的高いです。
東証上場企業の中で配当率が高い銘柄は、タバコや銀行などでしょうか。
配当率が高いのは、株主にとっては良いことのようにも思いますが、必ずしもそうではありません。
企業が設けた収益の使い道は、更なる発展・成長のために投資するか、株主に還元(配当)するかの、大きく二択になります。
もしもその企業が拡大していく戦略・展望があるのであれば、株主に還元するよりもむしろ投資に充てた方が、株価の上昇という観点で株主に利する、と考えられます。
逆に配当率が高い企業は、株価を上昇(=会社を成長)させるビジョンを大きく描くことができないとも言えます。
タバコのJTの配当率が高いのはまさにそうで、世の中からタバコを吸う人が減ってしまい成長性がないから株主還元として配当率を上げていると理解できます。
銀行も同様の捉え方がされやすく、世界の投資家から成長性に乏しい業界だと思われていることの裏返しとも言えるでしょう。
そうはいってもメガバンクは毎年数千億の収益を引き続きあげています。
海外企業の買収等、インオーガニックな成長に投資を続けている銀行もあります。
為替の変動等で影響を受けやすい面もありますが、要するに現場で働く身としては、装置産業がズタボロに言われながらもこれだけ収益をあげている企業がそうそう破綻するはずがないというのが実感です。
AIやロボの登場で事務職の数を減らすとしても、収益を稼ぐフロント職員・総合職はまだまだ必要とされており、むしろ世の中から人気が無くなるほど重宝される分野になっていくのではないでしょうか。
✔ 電子決済
~ペイや~テック、仮想通貨の登場で、キャッシュレスな時代が到来しました。
現金が不要になるから、ATMも支店もいらない。
従って銀行は不要である、IT企業にとって代わられる、という世論があります。
確かに使われないATMを置いておいてもコストがかさむだけだから徐々に縮小するのは正しい選択と思います。
WEB面談が可能になれば支店そのものの存在も、銀行にとって割に合わないものになっていくでしょう。
しかし、~ペイでの支払いが浸透しても、必ず裏には日本円が存在します。
日本円が裏付けにないのにPaypayで支払いはできません。
Paypayに銀行口座からチャージしないとPaypayで支払いができないというのと同義です。
お金を預かる、という機能は銀行法上、銀行にしかできません。
それ以外の企業がお金を調達したければ、社債や借り入れ等で銀行や証券会社を経由するしかないのです。
この機能がある以上、経済を回すインフラの立場としての銀行の地位は揺るがず、Paypayが世の中の資金決済の中心になったからといって銀行が即不要だ、とするのは短絡的すぎるというのが所見です。
✔ 就職ランキング
事務職がロボに取って代わられ、採用数を絞っているのは事実です。
支店やATMの削減と合わせて、経費削減も一定の目標を置いている銀行が多いですね。
採用数の減少と、これまで述べてきたような世間からの逆風も相まって、就職ランキングでもIT系企業や大手メーカーに上位を譲る格好になっています。
これも、むしろ人気がないからラッキーと思った方が幸せな気がします。
銀行そのもの(特にメガバンク)がすぐに破綻、という事態は想定されないと思います。
収益性が十分にあること、金融庁の目も厳しく懸念先への融資など不必要なリスクを取っていないこと、銀行法等の法律で守られる参入障壁の高い業界であること、などが主な背景にあります。
それでいて年収が高く、サービス残業もなく、そもそも働く時間や環境も過度に厳しすぎない。
周りの優秀なひとが、ランキングや世間の風評を踏まえて銀行を嫌うのであれば、自分にとってチャンスではないかと思います。
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