高級腕時計レンタルのトケマッチはポンジスキームだった?【わかりやすく解説】

  • 2024年3月16日
  • 2024年3月20日
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TOKE MATCHに時計を預けていた人『すごく高い預託使用料を受け取れるという謡い文句につられて、オメガやグランドセイコーなどの高級時計をトケマッチに預けていました。TBSや雑誌などでも取り上げられていたし、毎月のレンタル料金も振り込まれていたのでとても良い投資だと思っていましたが、先日、突然の法人解散が発表され、どうしたらよいのか路頭に迷っています…本当に時計は戻ってくるのでしょうか…?』

 

捜査関係者からの続報を見ると、最悪の事態になっている様子です。

 

福原敬済容疑者が預かっていた時計を無断で売却

 

悪意を持ったビジネスであった模様。

 

 

 TOKE MATCH(トケマッチ)とは

 

TOKE MATCH(トケマッチ)とは、高級時計の貸し手と借り手を繋ぐサービスを提供するサイトです。
貸し手のメリットは、普段使わない時計を眠らせるのではなく、第三者に有償で貸し出すことで収益を上げることができます。
借り手のメリットは、高嶺の花と思われていた憧れの高級時計を毎月定額支払うことでレンタルすることができます。
トケマッチのメリットは、借り手から受領する月額の収入から、貸し手に支払うレンタル料の費用を差し引いた差額が儲けになる、というものです。

 

腕時計の価格はこの数年で急激に上昇してきました。
僕がロレックスのデイトナを購入した2020年8月は、まだ定価130万円台でしたが、足元2023年9月は定価が200万円近くまで高騰しています。
約3年間で65万円ほど、ざっくり1.5倍にまで値上がりしたことになります。
一方、この3年間で日本人の平均的給与は全然上がっていません。
高級腕時計を着用したいと思っていても、給与の上昇が腕時計の価格上昇に追いついておらず、働けど働けど高嶺の花との距離は開く一方な状況にあるわけです。

 

そんな中で、トケマッチのサービスは確かに貸し手と借り手の双方にメリットをもたらしていたかもしれません。
高級腕時計を何本も所有している人は多くいますが(僕もその一人)、そのうち何本かは使わないでタンスの肥やしになってしまっていて、もったいない。
それを誰かに貸し出して収入を得ることができるのであれば、金銭的メリットは大きいですよね。
借り手も、高級腕時計を購入するための多額の資金を用意しなくても、月額1万円からでレンタルが可能となり、一時的な欲求を満たすことができます。

 

 

 トケマッチのサービス内容とリスクについての考察

 

そんなトケマッチですが、2024年1月末をもってサービス終了となりました。
当時のサービス内容の詳細と、僕も貸す側として利用を検討したことがありましたが考察の上で見送った経緯を、以下の記事にまとめてあります。

 

 

銀行員パパブログ

  TOKE MATCHについて興味がある人『ロレックスなどの高級時計を趣味で複数本もっています。最近、トケマッチという…

 

 

ざっくり言うと、『あまりに怪しいから近寄らない』ということでした。
ビジネスモデルにそもそも難がありましたし、貸す側のメリットがあまりにも大きく、借りる側の金銭的負担があまりにも大きいという歪んだ経済的利益関係が受け入れられませんでした。

 

 

 時計が戻ってくる可能性もあるのでは、と考察していましたが…

 

トケマッチに関するニュースの第一報が入ったときは、預けていた時計が戻ってくる蓋然性はそれなりにあるのでは…という内容の推察記事をアップしました。
時計を借りる側も、借りパクしたままでは罪に問われてしまうので、悪意ある一部のユーザー以外はほぼ返却するであろうこと。
高級時計にはシリアルナンバーがユニーク(個別に)設定されているので、大量売却したとしてもすぐに足がつくであろうこと。
このあたりが上記の根拠でした。

 

 

銀行員パパブログ

  TOKE MATCHに時計を預けていた人『資産運用のつもりで、ロレックスなどの高級時計をトケマッチに預けていました。…

 

 

その後、捜査関係者からの情報が断続的に発表され、事態は最悪の展開になりつつあります。
『被害者の会』なるものも保全申請を裁判所に提出するなど、動きが活発になっています。

 

 

NHKニュース

【NHK】高級腕時計の「シェアリングサービス」をうたい、多数の腕時計を預かっていた大阪の会社が突然解散を発表し、腕時計の…

 

 

 捜査で浮かび上がった疑い

 

様々なメディアで毎日ニュースが取り上げられています。
捜査関係者によると、以下のような疑い・事実があげられています。

 

 

①腕時計を借りた人からのレンタル料の入金などがこれまで確認されていない。
②時計の持ち主に無断で古物商に売却した事実が確認された(約140本以上?)。
③福原元代表と永田大輔容疑者は、会社の解散を発表した当日にドバイに向けて出国した。

 

 

仮に預かっていた時計を持ち主に返すつもりがあるのであれば、ドバイに出国はしないでしょう。
『返却する』という仕事が残っているからです。
また、既にレンタル中の時計とシリアルナンバーが一致する個体が中古市場に出回っていることが確認されており、預かっていた時計の少なくとも一部は無断で売却され、事業の運営や役職員の給与などに充当されていたことがわかります。

 

 

ポンジスキームをわかりやすく解説

 

今回の件は最悪の事態が想定されます。

 

 

 最悪のケース

 

今回のトケマッチの一件ですが、表向きなスキーム図は以下の通りです(出所:時事通信社から引用)。

 

 

 

 

運営会社(トケマッチ)は貸主から預かった時計を借主に貸し出します。
借主からレンタル料を徴収し、それを原資に貸主に預託料を分配する、というものです。
仮に預けた時計が借りられなくても預託料を支払う、というのが貸主にとって大きなメリットであったわけですが、今にして思えば大量の時計を預かるための口実だったのでしょうね。

 

さて、『表向きは』以上の通りなのですが、実態としては全く異なるものと思われます。
極端に言うと、以下のような状況であったと思われます。

 

 

①借主は存在しない(または少数)。
②トケマッチは預かった時計を順次無断で売却。
③売却資金で預託料を支払う自転車操業。
④トケマッチは預かった時計の大半を売却したところで資金を持ち逃げ。

 

 

 ①借主は存在しない(または少数)

 

高級時計をレンタルで楽しみたい、というニーズは一定数あるものと思われます。
実際、ビジネスモデルは全く異なりますが、『カリトケ』というサービスも存在します。
こちらは法人からリースで借りた時計を個人に貸し出す事業となっており、個人から時計を借りるトケマッチとは一線を画すものです。

 

 

カリトケ

カリトケは、ロレックス、オメガ、カルティエなど人気の高級・ブランド腕時計の通販と月額3,980円(税込4,378円)から…

 

 

借主がいたとして、その借主には規約通り時計を貸していたのでしょうね。
既に無断売却してしまった時計は、HP上で『レンタル中』とか掲載しておけばよいだけの話です。
借主がいないとレンタル料が支払われませんが、時計の売却金を元手にしていただけと思われます。

 

 

 ②トケマッチは預かった時計を順次無断で売却

 

トケマッチは複数の貸主に対する預託料を毎月払わなければなりません。
その資金を得るために、預かった時計の一部を順次、貸主に無断で売却していたようです。
高級時計には個体ごとにシリアルナンバーが控えられています。
トケマッチ解散以前において、貸し出した時計が古物商に売却されていた事実が、シリアルナンバーを根拠に確認されています。

 

ちょっと気になるのは、無断売却した時計が貸主から返却依頼された場合にどうしていたのでしょうね。
例えば法人解散のずっと前、例えば2023年8月にAという時計を売却していて、9月にAのオーナーから『時計を返してくれ』と言われていたら、それには応じなければならなかったはず。
恐らく同一モデルを用意して返送していたのだと思いますが、オーナーもシリアルナンバーの確認まではしなかったということでしょうか?
もしもきちんと確認するオーナーがいれば、ここまで事態が重くならなかったはずです。

 

ただ、借主は毎月高い預託料が入金されますし、そもそも『使う予定のない時計』だからこそ預けていたわけで、実態としては『返却要請』される時計の数がめちゃくちゃ少なかったのかもしれません。
ここまで当初から考えて事業運営していたのなら、トケマッチは相当悪質です。

 

 

 ③売却資金で預託料を支払う自転車操業

 

高級時計は中古でも高値で取引されます。
複数の貸主に預託料を支払わなければなりませんが、そのお金は借主からのレンタル料ではなく、預かった時計の売却金が元手になっていたわけです。
これが高級時計版のポンジスキームです。

 

ニュースによると、時計の売却は1度に10本ずつ程度、これを福原容疑者と永田容疑者の二人ですべて行っていた模様。
時計を売られる側として、一度に10本も持ち込まれたら『怪しい』と感じてほしいものです。
ここで買取を拒否していたら、やはり事態はここまで大事にならなかったはずです。

 

時計には不動産などのような登記制度がありません。
国や公的機関が第三者的立場で所有者を証明してくれる制度が無いということです。
もし高級時計にもこのような制度があれば、買取業者も『あれ、この時計の登記上の所有者と持ち込みにきた人が別人だな』と気づくはずです。
こうした制度を導入すると別の不具合も生じるので実現されてはいません。

 

 

 ④トケマッチは預かった時計の大半を売却したところで資金を持ち逃げ

 

少しずつ預かった時計を売却していき、ある程度資金がたまったところですべて放置して海外に逃亡。
借主が返却しようがしまいがもはやトケマッチは関係ないし、貸主への預託料の支払いもする必要もなし。
貸主に時計を返却する義務をトケマッチが負っていますが、犯罪行為を承知で踏み倒す、というわけです。

 

ちなみに、売却した時計の総額は最低でも1億5,000万円という報道もあります。
また、被害者の会によると、合計で1,000本弱、総額18億円相当が未返却のようです。
未返却の時計のうち、売却資金の一部はそれまでの事業運営に充当されていたはずなので、18億すべてが容疑者二人の懐に入って、ドバイでぬくぬく生活しているわけではないと思います。
また、1,000本も国内で売却するのは『怪しまれない』という意味でも困難でしょう。
一部の時計はドバイに持ち逃げして現地で売却している可能性もありますね。

 

 

 近々逮捕されるのでは?

 

ドバイに出国した容疑者の二名ですが、国際機関に捜査依頼をかけられているようです。
日本国内での売却資金が1.5億だとすると、それだけでは物価の高いドバイで生活し続けるのは困難でしょうし、ドバイで持ち逃げした時計を売却しようにも、既にそれらの時計のシリアルナンバーはドバイ当局に連携されているはずで、足はすぐにつくと思います。
ガーシー被告もドバイに出国しましたが結局つかまりましたし、今回の一件も近々逮捕されるのではないでしょうか。

 

トケマッチについてはTBSや週刊SPA!などでも好意的に取り上げられていましたが、彼らも一定の責任に問われるべきだと個人的には思います。
しかし、日本国内で犯罪を犯した人は、ドバイに逃げるのがマニュアル化されているのでしょうかね。
鉄槌が下るとよいのですが。

 

 

 

 

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